目を背けるな

真っ直ぐに前を見ろ

そうすれば見えてくる

 

 

全てが

 

 

 

 

STRAIGHT

 

 

 

 

「ねえ、質問」

「なんだ?」

 疲れてしまったジープを休ませるために近くにあった湖で小休憩を取った三蔵一向。

は三蔵の顔を覗き込みながらなにやら聞こうとしていた。

顰め面の三蔵なんてお構いなしに口を開く。

「どうして私を…」

「知らん」

 口を開いて3秒。

三蔵に手早く答えられてしまった。

は頬を膨らます。

「もう!! どうして教えてくれないのさ!!」

「教えたところでどうにでもならんだろうが」

「でも、知りたいんだもの!!」

「知らなくていい」

「じゃあ質問を変える!! どうしてあの時…」

「知るか」

 今度は2秒。

はこめかみに青筋を立てた。

「もう!! いい加減にしてよ!!」

「いい加減にすんのはテメェの方だ!!」

 言い合いが続いたかと思えばすかさず三蔵がハリセンを出しての頭を殴る。

スパンとイイ音が鳴る。

それでも負けていないはすぐに反撃に出る。

がこのメンバーに入ってからずっと行われている光景。

それをしっかり傍観しているうちの一人がほのぼのと呟く。

「仲がいいですね〜。相変わらず」

「…アレでか?」

「ええ。少なくとも良いんじゃないんですか? 仲良きことは美しきかな、ですよ」

 呆然と答える悟浄に八戒はにっこりと頷く。

悟浄は未だに戦っている三蔵とを見て、

「美しい、ねぇ…」

 どこか違うだろう、という言葉を紫煙に混ぜて吐き出す。

「なあ、は何を聞きたがってるんだ?」

 悟空が饅頭を片手に八戒に聞いてくる。

悟空の視線に八戒も首を傾げる。

「さあ? それは僕にも分かりませんよ。三蔵絡みってことは厭でも判るんですけど…」

「三蔵も嫌がってないではっきり答えてやればいいのにな」

「そうですね」

 三蔵のハゲけち坊主!!と叫ぶに渾身の力で殴っただろうハリセンの音を聞きながら3人はそれでも傍観を止めなかった。

その視線は呆れたような微笑ましいと言っているような視線ではあったが。

 

 

 

目を背けるな

真っ直ぐに前を見ろ

 

 

血溜りの中心に座っていた自分に掛けた声は全てを一掃しそうなほど強かった。

 

 

来い

 

 

そう言って手を差し伸べた。

 

 

ねぇ、どうして連れて行ってくれたの

ねぇ、どうしてあの言葉を言ったの

ねぇ、どうして答えてくれないの

 

 

 

「いい加減にしろ」

「だって…」

 湖の畔で野宿をすることになった5人。

しかし、は諦めていなかった。

じーっと三蔵を見つめている。

刺々しい視線に三蔵は大きく息をついた。

「だって、じゃないだろうが」

「じゃあ何で答えてくれないの?」

 いい加減にこっちも疲れてきていると言いたげに溜息をついてから、は言葉を口にする。

「私がどんな人間か知ってるのに」

「アレはお前のせいじゃないだろ」

「経緯がどうであれ、やったことには変わりが無いわ」

「だから目を背けるなと言った」

「どうして背けてはいけないの?」

「背けてはいけないことは無い。背けたければ背ければいい。だが……」

「だが?」

「お前には似合わないような気がしただけだ」

「えっ?」

 三蔵の言葉には目を見開いて三蔵に言い寄ろうとしたそのときには彼は眠っていた。

「ちょっ!! 三蔵!!」

 眠りにつく三蔵を必死になっては揺さぶる。

 

 

ねえ、どうしてそんなコト言うの。

ねえ、それはどういう意味。

ねえ、自惚れてもいい?

 

 

 

「ねえ!!三蔵ってば!!」

 は先程よりも激しく三蔵を揺さぶる。

三蔵は暫くの間無視していたが、しかしそこは短気な彼。

の行動に青筋を立て、を睨み付ける。

「いちいちう煩ぇ奴だな!! 真っ直ぐに前を向いてるお前が俺は好きだってことだ!! 分かったなら寝かせろ!!」

 いっきに早口でたくますと、三蔵は青筋を立てながらシーツを掛けなおして眠ってしまった。

は突然の言葉に目を丸くしていた。

そして、その場にズルズルと座り込んでしまった。

「……………………顔、熱い」

 かなり赤くなってしまっている頬を触っては小さく呟いた。

頬を触っていた呆けていた顔はそのうちに微笑をたたえていった。

「真っ直ぐに…か……」

 

 

 

アノときの声に

アノときの手の暖かさに

自分の心が持っていかれたのは自分自身が一番良く知っていて。

そして、彼もまた自分と同じ思いを持っていてくれていたことが、とても嬉しい。

気紛れなんかじゃなかった。

それがなによりも……

 

 

 

「ありがと、三蔵。私、真っ直ぐに生きてくね」

 

 

愛してくれる貴方のために

そして…

 

 

 

愛される自分のために…

 

 

 

 

 

 

 

Fin

 

あとがき

三蔵「……………」

三蔵が何を言いたいのかよく分かります。

貴夜さん、みちるさん。すいません!!

激不明文です!!

三蔵「ふざけてんのか?」

いえいえ。そんな滅相もない…あ〜〜〜!!! 撃つな〜〜〜!!!

三蔵「すまないな2人とも、こんな駄文をおくっちまって。…ってテメェはなにドサクサに紛れて逃げてんだよ!!」

あ〜〜〜ごめんなさい〜〜〜!! (T_T)


一周年記念に贈ったもの。

お二人からは2つ貰ったのに。

罪悪感…

 

 

2002.4.26

 

 

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