Eyes On Me
「…………」
焔はどうしていいのか分からずに呆然とその場に固まっていた。
目の前には青い髪を風になびかせ眠っている天界最高位の女神が…。
桜の幹に背を預け、クークーと気持ちよさそうに眠っていた。
「全く…肝が据わっているというかなんと言うか。だな…」
言葉は呆れているものだが。
声色は、どこまでも穏やかだ。
決してかなわぬ思い故か。
桜の薄紅と彼女の青い髪はとてもよく似合っていて。
どこまでも穏やかになれそうだった。
無防備な寝顔をもう暫く見ていようと決めたそのとき、
「ん…………」
眉を顰めて小さく声を上げる。
そしてうっすらと瞳を上げ始める。
自分を見つめる瞳はとても美しい空色だった。
「――――――――――えっ……………あ!!!!」
うすぼんやりとしていた思考が完璧に動き出す。
すると目の前の女神は空色の大きな目をさらに大きくして自分を凝視する。
そしてすぐさま顔をこれでもかと言うくらいに赤くする。
「あ、あ、あ……の…い…いつから?」
ようやく出た言葉は蚊のような声で。
それが可笑しくて思わず笑いそうになったがそれを抑えると薄く笑いながら焔は答えを返した。
「つい先ほどですよ。様」
「つい先ほど…………って…………ええっ!!」
は赤い顔をますます赤くし仕舞いには俯いてしまった。
焔はとうとう堪え切れすに笑い出してしまった。
笑い声を聞いてはすぐに顔を上げる。
「そ、そんなに笑うなんて…あんまりですわ!!!」
「いえ…申し訳……くっ……」
赤い顔で睨むものだからますます焔は笑い声をとめることが出来なくなってしまった。
「焔様ーーーーー!!!」
の絶叫が桜と天に響き渡った。
「申し訳ありませんでした、様」
「あ、あの…もうよろしいですから……」
自分に片膝を付き謝っている目の前の人を見ては今度は泣きそうな声で止める。
「もともと、わたくしがここで眠っていたのがいけなかったのですから。だから、どうか面を上げてください」
そっと両膝を突いて俯いている焔の顔を覗き込む。
その瞳は本当に泣きそうで。
焔は口の端を上げて頷いた。
はそれを見てホッとしたように微笑んだ。
そして先ほどまで座っていた桜の根にもう一度座りなおした。
焔も立ち上がってを見たがそのうちにふと疑問が浮かび上がった。
「様」
「はい?」
「何故、俺の名を?」
彼女と話をするのはこれが始めてだ。
何度か宴やら何やらの席であったことはあるが。
しかしそれは顔を見る程度であり話など、とてもではないが出来なかった。
それだけ、彼女との身分は違いすぎて。
それでも…惹かれずにいられなかったのは。
おそらく、きっとあのふわりと笑う笑顔のため。
焔の問いを聞いてはにこっと笑った。
「何度か宴の時にお会いしましたから。…お話はしていませんでしたけど」
最後の言葉はどこかおかしそうに言う。
しかし、次の言葉をとても、いとおしそうに聞こえた。
「でも、よくこちらを見ていたような気がしていたので……あ」
思わず言わなくてもいいようなことが口に出たらしくは口を押さえた。
「…申し訳ありません。そんな事はあり得る筈がありませんのにね」
口を押さえたまま苦笑するを焔は驚いて見詰めた。
どうして知っているのだろう
貴女を見ていたことに
「いえ、別に…。しかし何故そうお思いになったのですか?」
見ていたことを曖昧にして焔は言葉をに差し向けた。
どうしても聞きたかった。
彼女がそれを何故知っているのか。
はもう一度苦笑すると恥ずかしそうに答えた。
「見ていましたから。貴方を」
柔らかな瞳で見つめられているような気がして、そちらを向けば。
貴方がいつもそこにいた。
「言葉はなくとも、いつも目を向けてくださっていたような気がして。とても嬉しかったです。
でも、わたくしの思い違いだったみたいですわね。申し訳ありません」
悲しそうに笑う彼女を見て焔は、曖昧に答えたことを後悔した。
しかし、はっきり言うにはどこか引けを感じて。
それは、己を流れる血の所為かも知れないと思うと悔しかった。
「あの、焔様」
黙って俯いた焔に気遣わしげな声が掛かる。
焔がその顔を上げるとは
「焔様。もし貴方様がよろしければ、これから時々ここに来ては頂けませんでしょうか?」
突然の申し込み。
焔は目を見開いた。
は焔を真っ直ぐ見て微笑みながら言葉を送る。
「わたくしは、貴方のことを知りたい。ここで出逢えたのも、何かの縁ですもの。悟空達みたいに沢山会って色々お話をしていろんな物見て。
そんな風に貴方とも過ごしたい。わたくしの我儘ですけれど…どうでしょう?」
そう言って見上げてくる瞳はとても輝いていて。
そうなって欲しいと心から望んでいて。
そして、それは焔自身にとっても願っても無いことで。
彼は微笑んだ。
「俺でよければ、喜んで」
彼女にそう答えるとは嬉しそうにふわっと笑って焔を見た。
始めて間近で見る惹かれた微笑に焔はとても穏やかな瞳で返していた。
それは夢のようで夢ではない。
なぜなら
彼女はこちらに手を伸ばしてきて自分はそれを掴んだのだから
Fin
後書という言い訳
鳴海さん!! すいません意味不明文です!!
しかも短!!
FF[のEyes On Meを聞いていたらこんなもんを思い浮かべてしまって!!
相互記念に渡すものではない…ああ。(T_T)
すいません、これが私めの限界です。
すいません。
そして相互ありがとうございました!!
相互のお礼を書いてなくて2重苦…
自業自得であった私。
反省。
2002.4.26
改稿:2008.5.16