星が綺麗だ。
空を見上げて、私はそう思った。
世界は崩壊の一途を辿っているけど、場所によっては綺麗な星空を見られる場所が残っている。
月の姿はないけど、星が本当にたくさん光っているお陰か、辺りの景色がぼんやりと見える。
私は近くに立っている木の根元を見て、目を丸めた。
その木の根元には、私の愛しい人が寝息を立てて眠っていた。
みんな疲れてるだろうから、私一人で野営の見張りをしようとしていたら、一私と一緒に野営の見張りをと申し出てくれた。
私を愛してくれる、私の愛しい人。
最初の頃は頑張っていたのかきちんと起きてたんだけど、連日の先頭の疲れが出てきたんだろうな。
申し訳ないと思いつつ、それでも嬉しいと感じながら。
私はそっと近付いて、眠っている愛しい人の頬に触れた。
私は精神体だけど、ある程度の物質干渉を許されている。
でも、ある境界を越えると、まるでそれ以上は許されないとばかりに途端に干渉ができなくなってしまう。
つまり、何を触ってもすり抜けていく。
今は軽く触れている私の掌から、指先から、愛しい人の体温が伝わってくる。
それがどうしようもなく愛おしくて、切ない。
だって、唇を触れ合わせることはできても、抱きしめあうことは出来ても。
深く重ねることも、深く繋がることもできないんだから。
それがとても悲しくて、苦しいと思わない方がおかしい。
好きな人ならずっとどこまでも触れていたいって思うから。
でも。
これで良いんだって思ってる私もいる。
私達は異なる世界から召喚された存在。
全てが終われば、元いた世界に戻るのだ。
世界の結末がどうであれ。
私たちを待っているのは、別離しかない。
だから。
だから、これで良いんだ。
深く触れ合うことが出来ないままなら、きっと心に付く傷は深くない。
そりゃ愛しい人との別れなんだから、辛くないって言えば嘘になる。
でも、深く触れ合っていた時よりも、傷は浅くなるはずだから。
触れられない体。
これは私達が未来に必要なもの。
苦しいけど、必要な距離。
悲しいけど、必要な間隔。
私は愛しい人の頬を撫でる。
愛してる。
なんてこと、今まで築いてきた距離が壊れそうで絶対に口になんかできない。
でも、せめて。
これだけは。
「大好き」
必 要 別離 間 隔
あとがき
名前変換すらなっていないという(爆)
先達は物質干渉が許されてはいるけど実際精神体なので、ある程度を越すと何も触れなくなります。
すり抜けます。
だから、ディシディア世界で誰かと恋仲になったら、絶対にこういうことを考える時が来るんだろうなぁと思って。
それを苦しく思いながら何とかして自分自身を納得させている雰囲気が出せてれば…良いなぁ。
今回意識して俗にいう民具調にしてみました(あとがき書いてる時点で似非も良いところですが)
…結構難しいですね(爆)
2009.4.5