気付いたら、見知らぬ場所にいた。
「……ん!?」
全く記憶に無い状態では動揺を隠せない。
一応辺りを見渡すと、どうやら自分は一本の道の上に立っているらしい。
空を仰ぐと、ちょうど黄昏時らしい。地平線がオレンジで天上は藍色をしていた。
ご丁寧に月と星が少し瞬いている。
「……………どこよここは」
至極もっともなの言葉に答えるかのように、の服の一部が光り出した。
「なに? ……ってなんだこの服は!」
今日自分が着ていた服と違う衣装に、は今度は驚きを隠せなかった。
「なんで黒い服!? いや、嫌いじゃないけどね!」
誰もいない空間でセルフツッコミを行うに焦れたのか、服の中の光がいっそう強くなる。
早く出せってか。
は混乱する頭のまま、光を取り出す。
瞬間、の脳裏に何かが入り込んできた。
古い映画のフィルムを見ている感覚がしばらく続いたかと思うと、光は消えてしまっていた。
しばらくの間、は呆然と手の中にある物を見つめた。
そして、盛大に溜息を吐いた。
「コスモス…」
かつて、行った事がある異世界の神の名を呼び、はうな垂れた。
「嫌がらせだよ、むしろこれは」
先ほどの光で、欲しい情報は得た。
しかし、これは酷い。
与えられた条件と仕事には思わず現実逃避をしたくなったが、意識だけ逃げてもどうにもならない。
「はあ」
もう一度大きく溜息を吐いて、は手の中にある物を見た。
十の、光り輝くもの。
それを見ているうちに、の心は決まってきた。
正直なところ、乗り気ではない。
と言うより、面倒臭そうで凹む。
だが、これはある意味チャンスでもあるのだろう。
そう思うと、心がどんどんと楽しみで弾んでくる。
「人生、楽しんだ者勝ちよね! オッケー! やってやろうじゃない!」
は手の中にある物を仕舞い、足取り軽やかに目の前にある道を進み始めた。