気付くと、はその場所に立っていた。
この旅を始めた、最初の地だ。
何もかもが始まりと同じだった。
しかし、違うこともある。
の手にはもう、ひとつもクリスタルがない事。
そして、仲間の世界の記憶がある事。
はギュッと両手を握り締めると空を仰いだ。
空は相変わらず黄昏ていて月と星が少し輝くだけだった。
は口を開いた。
「すっごく楽しかった! ありがとう!!」
この世界のどこかにいるだろう神にはありったけの感謝を告げる。
当然、答えは帰ってこない。
だが、は口の端を上げて笑い、歩き出した。
もちろん、歩く方向は今まで進んで行っただろう道とは正反対の真逆の道だ。
おそらくこちらを歩いて行けば、本当の自分の世界に帰れるはずだ。
不思議と不安が無いから大丈夫だろう。
帰ったとき、この記憶がどうなっているか解らない。
でも、きっと心のどこかには残っていると信じている。
は夜の色をした服を翻して、真っ直ぐに歩いて帰っていった。
神が起こしてくれた贈り物は、先達と呼ばれた少女の笑顔で締めくくられた。
Fin
2009/12/24