スピードあげて 昨日感じたやなことなんて 風に全部流した
君が待つ街へ急ぐ 高速乗って
まだ入ってたい冬の朝のベッドの中。
うーんと1つのびをして窓を見ると…真っ青な空が、ひろがっていた。
俺にしたら一生あるかないかのことだけど、目覚ましよりも先におきてる。
うわ、すっげー俺!!
これもやっぱ、さんへの愛の力だよな。うんうん♪
慌てることもないのにベッドから飛び起きて、走って洗面所にいって支度して、おもむろに鏡の前に立ってみる。
う…この服でいっかな。
こないださんっざん三上先輩に言われたんだよなー。
少しは服に気をつかえって。
俺なりに気ぃつかってるんだけどな、さんに逢うときだけは。
ったく、だいたい、三上先輩と俺の服の趣味があうわけないじゃん。
あんな紫色のシャツ、俺が着たら冗談にしかならないって。
…でもさん、みっちー好きだって言ってたよな…ってことはああいう趣味ってこと、なのか!?
あーもう、わかんねーよー!!
もういいや。
三上先輩のアドバイスは忘れよう。
えっと、このジーンズにこっちのシャツに…
えーい、これに決定!
とにかくさんに早く逢いたいから!!
ばたばたと荷物と車のキーを片手に、トーストを口につっこんで、
俺は晴天の休日のはじまりへと駆け出した。
滅多にないオフの日の早起きには、理由がある。
そう。
今日は久しぶりに一日ゆっくりできる、さんとのデートの日、なんだ♪
俺が高校卒業してプロになってから、チームの都合でさんと家が遠くなっちゃって、その上遠征とかもあるし、
なかなかゆっくり逢える日がなくて。
どうしよう俺、こんなんで…さんを不安にしちゃわないかってめちゃくちゃ焦ってたけど、でも。
そんな風に焦る時間があるなら、
その時間に少しでも電話して声聞いて、
メール送って、暇をみて逢いにいったほうがいいかなって思い直して、今に至る。
至るわけだけど…やっぱりさ、こんなふうにゆっくり逢える日は、もう格別に嬉しいんだ!
やっぱり顔をみて話せない分、少しづつだけど気持ちがずれていっちゃうことも…ある、かもしれないし。
だからやっぱり、こうやって逢って、はっきり俺の気持ちを
さんに伝えることも大事だと思う。
それができるなら、普段の厳しい練習なんてぜんっぜん平気なんだよな。
もう少ししたらさんに逢える。
さんの傍で、一日すごせるんだ。
あー、考えただけで俺、しあわせだー!!
もう何もしなくてもいいや、俺。
どっちかっていうと、ふたりっきりになるほうがいいかもな…うーん。
とにかく、嬉しい。
高速を走る速度も、自然と早くなる…ってこれはいっつもさんに怒られるから、内緒にしとかなきゃ、だよな。
でも、しょうがない。
嬉しいときって、自分を止められないもんだし。
飛ばしに飛ばしまくったせいで、約束より30分も早く着いちまった。
うーん、まだ支度できてないかな?
さんにとっても貴重な休日なわけだし、寝坊したいだろうな。
どうしよう…電話していーのか…うーん。
マンションの前に車を止めて、外から見上げたさんち。
あー、だめだ俺。
自然と顔が緩んで、しょうがない。
今ここに誰も来ませんよーに!!でないと俺、かなりアヤシイ奴だって(笑)。
「…くん。誠くん?」
「あ、はい。…って、ええー!!?」
「なあに誠くんったら。約束してたのに、そんなに驚くことはないんじゃないの?」
ぽん、と肩をたたかれて振り向くと。
…さん、だぁ…
クスクスと笑う姿があまりにも可愛くて、目が離せない。
じゃ、なくって!
「どうして30分前なのに、ここにいるんだよさん?!」
「…そんなの、決まってるでしょ?」
「え?」
「今日、とーっても楽しみだったんだもん♪
勝手になんだか早起きしちゃって、支度なんてもう1時間前に終わってたよ。
そしたらなんだか車のエンジン音が聞こえてきたから、
ひょっとしてって思って、降りてきてみたの」
「そっか…」
「わかりましたか、誠くん?」
ふふ、と笑って俺の頭をぽん、と叩く。
…くーっ。
可愛い。
可愛いぜ!!!
こんな何気ない仕草なのに、さんだと特別に可愛く思えるんだ。
しあわせを、噛みしめる。
「誠くんってば。ぼうっとしてないで、早くでかけようよ」
「あ、う、うん。
あれ、そのバスケットはどうしたの?」
「これ?
へへー、じゃーん!」
車のボンネットの上で、得意げにバスケットを開けてみせてくれる
「今日は自然公園につれてってくれるって行ってたから、お弁当を作ってみました♪」
「えー!!料理の苦手なさんが…」
どうすればいいんだよ、俺。
逢えただけでも、かなりのしあわせなのに、その上、手作りの弁当だって?
…感激!!
「こらっ誠くん、一言多いよもうー。
そんな事言うと、あげないよ?」
「うわっごめんさん!俺いい間違えたんだよ。
料理が苦手だったさんが、一生懸命練習して得意になってくれたってちゃあんとわかってるから、だからそれ下さい。お願い!」
ぱん、とさんの目の前で手をあわせてひたすら謝る。
そんな俺をみてまたクスクス笑う。
「うそうそ、本気で怒ってないよ。
さ、行こうよ」
「…うん!」
バスケットを片手に、もう一方の手で助手席のドアを開けて。
俺たちは、待ちに待ったデートに出発した。
「なあ、さん」
「なに?誠くん。
あー、ナビって難しいんだな〜」
地図を見て、一生懸命うーんと首をかしげる姿がなんとも愛らしい。
地図なんて見なくてもいいのに。今日が楽しみすぎて俺、道順なんてカンペキに覚えてきたんだからさ。
「…すげーよな、さんって」
「え、きゅ、急にどうしたの?なんで?」
「だってさ、俺、さんに逢えるのがすっげー楽しみで、
今週一週間、練習とかもばりばりできたし。
普段の試合とかもさー、たとえ会場にきてくれてなくてもさんが応援してくれてるって思うと、すっげーがんばれるんだぜ?
うん。
すごいよ、さん」
最近そう思うんだ。
離れてしまってから、特に。
「…そんなこと、ないと思うけ…
でも、そう思ってくれてすごく嬉しい。
ありがと、誠くん」
チュッと音をたてて頬にキスしてくれた(やったー!!)後、
さんはそれはそれはもう言い表せないくらいに可愛い笑顔で、俺に向かって微笑んでくれた。
…信号、赤でよかったぜ…(笑)
「私もね、そう思うよ。
誠くん今ごろがんばってるだろうなって思うと、すごく力が湧いてくるっていうか…よーし一緒にがんばろう!!
って、そう思えるんだよ。
誠くんだって、すごいよ」
「そ、そうなの?」
「うん、そう」
「…やったー!
さんにそんなふうに思われてたなんて、俺、すげー嬉しい!」
「こ、こらこら誠くん、もう信号青だってば!」
慌てるさんをよそに、俺はその柔らかな体を思いっきり抱きしめてから、
再びアクセルを踏んだ。
まわりのことなんて関係なくなっちゃうくらいに、大好きなんだ。
君が傍にいると、なんだか落ち着かなくて、でも安心して、不思議な気持ちになる。
そう。
さんを見つけることのできた俺は…世界一の幸せものだって、そう思ってるんだ。
Fin
あとがき
幸せなのはあたしですよ!!
わがHP初のドリームいただきです!!!
相互リンクのお礼に下さったルティさん!!
本当にありがとうございます!!!!
………………………はーはー(息切れ)
藤代「落ち着けって;;」
よかったね藤代!!
藤代「うん!!! anamなんていつ俺書いてくれるかわかんなかったもんな」
そのうち書くから、長い目で見てよ。
藤代「ま、いっか。ルティさん。本当にありがとね! これからも暇な時に見に来てやってね」
2002.2.18