青の薔薇。

在り得ないものとしての意味を持つ。

不可能の薔薇。

 

 

青の薔薇

 

 

ラッセルが新聞を見ながら難しい顔をしているのを見ては眼を丸めた。

「ラス、どうしたの?」

 手に持っていたトレイをテーブルに置きながらはラッセルに近付いた。

「えっ?」

急に声をかけられたことに驚いてラッセルは顔をに向ける。

は新聞を持ちながら振り返ったラッセルに近付くと新聞を見た。

いつも通りに届く、何の変哲もない新聞だと思いつつ、ある記事を見て彼女もまた眼を丸めた。

「植物での錬成を得意をしているラッセル・トリンガムとしては、ヤッパリ気になるもの?」

「まあな」

 にっこりと含みのある笑みを浮かべるにラッセルは苦笑を返す。

2人が目に付いた記事は薔薇のことが書かれていた。

薔薇といってもただの薔薇ではない。

青い薔薇が開発されたというものだった。

「青い薔薇って言ったら【有り得ないもの】で有名だったのにね。そういえば、何で薔薇は青い色がなかったの?」

 は錬金術師であるラッセルを見ると彼はから目を離し再び記事に目を向けた。

「薔薇は元々赤色遺伝子しか持ってないんだ。

そこで人工的に青色遺伝子を組み込むことをしてこういう青い色の薔薇を作ったんだろ」

「………う〜〜ん、要するに元々薔薇は青い色の花が咲かないようになっててそれを、何とかするために青をどっかから持って

きて作ったってコトね」

 専門用語使われても解らないわ、と文句を言いつつは自分なりの解釈をし、ラッセルを頷かせた。

「簡単に言えばそうなる。にしても、本当に出来るなんてな」

「悔しい?」

「…というのとはちょっと違うけど…」

「複雑ってところ?」

「そんなところかな」

 複雑そうな視線で記事を見るラッセルにももう一度記事を見やった。

記事には紫がかった青の薔薇の写真が載せられていた。

今はまだ完全な青とはいえないが、いつか研究を重ねた先に青の薔薇が完成するかもしれない。

【有り得ないもの】が【有り得るもの】へと変わる。

それはどこか物淋しさを感じるものがある。

だけど。

はラッセルに抱きついた。

「!! !?」

「ステキね、ラス」

 急に抱きつかれて思い切り慌ててこちらを見たラッセルをは実に楽しそうな笑顔で見返す。

「【有り得ないもの】が【有り得るもの】に変わってしまうのはどこか物淋しいわ」

 想像して、夢見たものが現実のカタチになったとき夢見たものが遠くへ行ってしまう喪失感。

自分ひとりのものがまわり全て物もになってしまう寂しさは確かにあるけれど。

「でもその分、綺麗なものがこの世に増えるって言うのは、とってもステキなことだと思わない?」

 ね?と笑うを見てラッセルも薄い笑みを浮かべた。

「そうかもな」

「でしょ?」

 にこりと笑うにラッセルはこう聞いてみる。

「いつか、青い薔薇が市場に出たら」

「買ってみましょうか?」

 有り得るものへとその名を変えた青の薔薇を買いに。

 2人は青の薔薇を一瞥しお互いの顔を見合わせ、クスクスと笑った。

 

 

 

 

 

Fin


あとがき

 

私的夢100、bS3『青の薔薇』でした!

初の鋼ドリ! なんと相手はラッセル!

ラッセルごめん、口調覚えてないから変。

ラッセル「お前が駄文しか書かないのは知ってる。で、なんで青の薔薇なんだ?」

駄文って…まあいつものことだけどサッ!(T_T)

最近…っても2ヶ月前くらいかな? 青い薔薇が本当に完成したんだよ。

で、それを元になんか書けないかなって。そんで植物って言ったらラッセルかなって思って…。

ラッセル「それでオレか」

おう。でもなんかお題になってないような気もしなくもないが、まあしょうがないとして。

ラッセル「しょうがないのか」

ゴメン。ちなみにラスというのは私がつけたラッセルの愛称。

あんまメジャーじゃないけどね…ってことでラス、後宜しく。(逃亡)

ラッセル「………(溜息) 。いつか青い薔薇を買いに行こうな」

 

 

2004.8.9

 

 

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