時期は6月。

 夏が姿を見せはじめて来たのと同時に、それは姿を現わす。

 

 

初夏の出来事

 

 

「お、制服組は夏服か!」

 第一声を放ったのは、バッツだった。

 彼の目の前には、厚い布で作られた冬服から軽い夏服に装いを変えた友人たちがいる。

「もうそんな季節なんだな」

 クラウドが感慨深かそうに呟く。

 そんな友人を見て、制服に身を包んでいる面々は顔を見合わせ照れ臭そうにはにかむ。

「でもさ。女子のはともかく、男子のはなんてか…味気ないんスよねぇ」

 はにかんだあとでティーダが言い放つ。

「半袖のシャツ一枚だぜ? ねぎなんか中等部の着てても絶対わかんないよな」

 手を頭の後ろで組みつつ、ティーダがねぎと呼ばれた少年の方を見ると、彼は頬を膨らませてティーダを睨んでいた。

「ねぎって言うな! それに、僕はきちんと高等部の制服を着てるんだからね!」

「あー! ごめん! オレが悪かったっス! だから飛び掛ってくるの禁止!」

 ものすごい剣幕でティーダに突っ込んでいく少年を苦笑いを浮かべて一同見守る。

「ま、オレはヤローの制服なんか興味ないし、男の制服は汚してナンボだからな。これでいいんじゃねぇの?」

 ティーダと少年を見守りつつ、笑いながら言ったのはジタン。

「汚してナンボは言いすぎだが…。まあ確かに、これくらいでいいのかもな」

 苦笑を浮かべて頷いたのはフリオニールだった。

「っておい! 誰も助けてくれないのかよ!」

 微笑ましく見守られているのに耐え切れなくなったのか、ティーダが叫ぶ。

「自業自得だ。エースなら耐えろ」

 スコールが簡潔に返す。

「頑張れ、エース」

 スコールの隣に立つクラウドも頷き、またなんとも言えない言葉を送る。

「はくじょうもの! それにエース関係ないし!」

「ティーダァ!」

「わー! ねぎ、マジでごめんってば!」

 すでにじゃれあいと化しているティーダと少年のやり取りを、ティナはくすくすと小さく声を立てて笑っていたらふと、視線を感じた。

?」

 笑うのをやめて視線の方を向けば、そこにはの姿があった。

「どうしたの?」

 ぼうっとしているようにも見えるに近づくと、彼女はあっ、と我に戻ったような声を上げた。

「ああうん。ティナの制服…」

「? 制服がどうかしたの?」

 小首を傾げるティナに、たいした事じゃないのだけどとは笑った。

「去年までその夏服、私も着てたんだなぁって思ったら、なんか不思議に思っただけ」

 6月が近づいて来たとき、慌てて夏の制服を探そうとして。

 もう着ないことに気づいた事を脳裏に浮かべながら、はただただ笑う。

「高等部卒業してまだ半年も経ってないのに、その服見て懐かしいなって思っちゃって…。ちょっと変よね」

「そんなことはないさ。その気持ち、なんとなく解るよ」

「セシル」

 ティナとの輪にセシルが入ってきた。

 セシルはにこりと笑いながら、口を開く。

「環境が今までと変わると、少し前の事でも凄く懐かしいって思うんだよ」

 柔らかく笑うセシルに、は聞き返す。

「セシルも、そうだった?」

 彼はかすかに首を傾げて頷いた。

「うん。今も時々思うよ」

「おれもあるぜ!」

 バッツがセシルの後ろから首を出す。

「旅先とかから帰ってくると、いろいろ変わってたりしてさ。すんげぇ懐かしくなるんだ」

「バッツの場合は現実逃避もあるんじゃないのかい?」

「なんだよセシル。それどういう意味?」

「レポートの提出期限近づいてるよ」

「ゲッ!」

 にこにこ笑うセシルと顔を引きつらせたバッツ。

 対照的な二人を見て、ティナとも顔を見合わせると、こちらは楽しそうに笑い合う。

「私も、やセシルたちみたいに思う日がくるのかな?」

「あるんじゃない? 人生いろいろ、何があるか解らないしね」

「そうだね」

 ティナとが話している間もティーダたちがいる方は未だ騒がしく。

 いつまでたっても賑やかだ。

 その様子をほんの少し離れたところでライトが目を細めて見守っている。

「どうしたんだ?」

 ティーダたち喧騒から離れて、クラウドがライトに近づいた。

 声をかけてきたクラウドを目だけで一瞥したかと思えば、ライトはすぐに視線を戻す。

「いや…」

 彼の目の前には、和気藹々と過ごす友人たち。

 半袖の制服がふわりとなびく傍らで、制服を着ていないものたちの装いもまた夏のものとなって来ている。

「夏が、近づいてきたな」

 小さくライトの口から出てきた言葉に、クラウドは目を丸めると空を仰いだ。

「そうだな」

 目の前の光景も、空も夏の姿が見えてきている。

 

 

 夏は、すぐそこまでやってきている。



 

 

 

Fin


あとがき

私的夢100のお題1『初夏の出来事』でした。

つか、お題自体久々だ(笑)

DFFで学園パラレルやって見ました。初パラレル。

初夏と言うと5月か6月で、もう6月なのでこっちにして見たはいいものの、

「6月…初夏…イベント……ハッ! 衣替え!」

と言う形に落ち着きましたってかこれしか思い付かなかったです(爆)

しかし、衣替えと言うよりもただ単に皆が和気藹々してる感じになってしまいました。

でも、こういう息抜きっぽいのもいいかもしれません。

オニオンナイトは名前が出なくて正直すまないと思ってる(爆)

あと、もう6月も中旬なのに衣替えとかて言うツッコミは不可です、本人解ってます。


2009.6.19

 

 

 

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