優姫は手塚の手にある物を見て目を丸めた。
「ブッチョ、ケータイ持ってたんだ〜〜」
彼の手にあるのはネイビーの携帯電話。
手塚は優姫の方を見ると少し怪訝な表情を浮かべる。
「俺が持っていてはおかしいか?」
「うん」
間髪をいれずに頷く優姫を見て手塚は思わず眉間に手を当てた。
優姫はそんな彼を見てクスリと笑う。
「だってさ〜〜、ブッチョってなんか古風な感じがするから、こういうの持たないと思ったんですもん」
優姫は手塚の前に座る。
手塚は眉間から手を離すと携帯をコトリと机の上に置いた。
そして部誌の方へ向き書き始める。
「俺も最初は必要ないと思っていたんだがな。母が緊急時とか急用が出来たときに使えるからと言って買ってきたんだ」
優姫が携帯の方へと視線を向けているのに気付き部誌を書きながら手塚が言う。
ソレを聞くと優姫はほうっと頷いた。
「そっか〜ブッチョいろいろ忙しいもんね。流石、彩菜さん」
にこやかに笑う手塚の母の顔を思い浮かべて優姫は薄く微笑むと、
「携帯、見てもいいですか?」
と上目遣いで聞く。
手塚は一瞬優姫を見て再び部誌を見る。
「………中は見るなよ」
「そんな失礼なことはしません〜」
菊ちゃん先輩や不二センじゃないんだからと頬を膨らませて抗議の声を上げてから優姫は手塚の携帯を手に取った。
手に取ったネイビーの携帯をいろいろな角度から見つめる。
「あ、私とおんなじメーカーだ」
「そうなのか?」
「うん。機種違うけど」
部誌を書き終えた手塚が優姫の言葉に顔を上げる。
優姫はソレが嬉しくて笑顔で答えると鞄から自分の携帯電話を取り出した。
彼女の携帯はシルバーの携帯。
他の女子がしているようなシールやラメは一切施していない携帯。
ただ少しところどろこに傷はあるが。
「あまり落とすな。いつか壊れるぞ」
「あ、ヤッパ解っちゃいますか?」
「………日野三」
えへへ〜〜と決まり悪そうに笑う優姫を見て自分の言葉が正しいことが実証されて手塚は大きく溜息をついた。
呆れたような溜息をつく手塚に優姫はムッと顔を顰める。
「今度からは気をつけますよ〜〜〜だ。………ああ、そうそう」
何かを思い出したように優姫はポンと掌を叩く。
手塚は何事かと視線で言えば優姫はニコッと笑った。
「せっかくだからブッチョのアドレス教えてください」
「ああ」
優姫の申し出に今度は手塚が間髪をいれずに答える。
少しは渋るかと思ったのに…
吃驚した表情を浮かべる優姫に手塚は薄く口の端を上げた。
「お前はきちんと教えるつもりだったからな」
「――――――――――――――――――ありがとうございます」
優姫は姫の微笑を浮かべていた。
それからと言うもの。
手塚のネイビーの携帯には迷惑にならない程度のメールが送られるようになったとか。
そのメールの相手はシルバーの携帯電話の持ち主からかどうかは
本人たちだけの秘密らしい。
Fin
あとがき
100のお題51:携帯電話でした。
手塚「何故俺なんだ?」
とある同人作家さんの満が見て思いついたんです。
手塚ってケータイもってなさそうで持ってたらおかしいなっと思ったから。
手塚「……ほう?」
ま、実際は似合ってそうでいいんだけどね。
かっくいいじゃん。
手塚「お前に言われてもな」
………ああそうかい。そうだろうさ(T_T)
2003.2.22