おにぎり、サラダ、ケーキやタルトなどのスイーツ。

何でも色々取り揃え。

好きなだけ取っていけるのが結構魅力的?

 

 

デリカテッセン

 

 

太陽も水平線に落ちていくだろう時間、とあるデパートでは水面下でちょっとした事件が起こっていた。

夕飯のおかずにと色々な物を詰めていくおばちゃんや若い娘さんなどがある一点をポーッと見つめているのだ。

その視線の先には三人組。

オフホワイトのサマーセーターと同色のズボンを履いた、目が覚めるような美しい金紗の髪。

赤いTシャツにの上にGジャンにモスグリーンのズボンを履いた、見るものに暖かさを与えてしまいそうな優しい大地色の髪。

桜色のワンピースを着ている、流れるような綺麗な青い髪。

背丈からして男二人女の一人の三人組みなのだが後姿の立ち姿も美しい。

そのためか、この三人組みが通り過ぎていった場所に立っている人すべてが魂を抜かれたかのように呆然としているのであった。

しかしそんな周囲の静かなる混乱など、この三人には気付く由もなかった。

 

 

「ッたく、何で俺がこんなことしなくちゃらなねぇんだ」

 デパートの籠を持ちつつ不貞腐れているように呟く金蝉。

「仕方がありませんわ。今日は静夜も三蔵様も悟浄様も八戒様も、皆様所用で家を出なければいけなかったのですから」

 愚痴を言う金蝉に対し、今日の夜に食べる物を吟味しつつそう嗜めたのは太真。

大企業の重役である金蝉と、彼が勤めている会社の大株主の令嬢である太真が普段あまり来ないであろう場所に来ている原因は、悟空にあった。

二人が忙しくない今日に限って、悟空を抜かした三蔵たち四人が各々の用事で家を出なくてはならなくなったのだ。

前々から予定が入っていた三蔵と悟浄とは違い、静夜と八戒の二人は急に予定が入ってしまったため夕飯の支度をする暇もなく家を出て行かな

ければならなかったらしい。

家に残るのは食べることは得意でも料理は苦手な悟空。

このまま一人で家に留守番してても出前を頼むし大丈夫だろうとこのとき二人は思ったそうだが、ふと金蝉が休みだということを思い出した二人は

せっかくだしと思い急いでもう一人の悟空の保護者である金蝉と恐らく傍にいるであろう太真に連絡をしたのだ。

悟空と一緒に夕飯をとってくれ、と。

「宜しいじゃないですか。久しぶりに悟空と食事が出来るんですから」

 静夜と八戒の計らいの意味を感じ取った太真は嬉しそうに金蝉に声をかける。

勿論、金蝉だって解ってはいるのだが。

「それなら別にここで買って食べなくたって…」

「貴方がそう仰る気持ちも解りますわ。でも、ここで買って家で食べたいと言った悟空の気持ちを酌みましょう」

 金には困っていない二人である、どこかの料亭でもと思っていたのだが悟空がそれを却下した。

どうもこのデパートに出来たデリカテッセンが気になって仕方がなかったらしい。

そして、久しぶりの金蝉たちの食事だというのもあったのかもしれない。

家で楽しく食べたいと、そう思ったのかもしれない。

ふわりと太真に微笑まれて金蝉の言葉が詰まる。

どう切り返そうか迷ったその時、悟空の声が耳に入ってきた。

「なあなあ、これも食っていい?」

 弾むような悟空の言葉に二人が顔を向けた先には大量のおかずが詰め込まれたプラスチックケースの山が。

ゴン!

当然というべきか金蝉が悟空を殴っていた。

「いってー! なにすんだよ金蝉!」

「うるさい! 何でお前はそんなに沢山持ってくるんだ!」

「だってー、腹減ってんだもん」

「それにしたって詰め込みすぎだ」

 シュンと項垂れた悟空に金蝉は溜息をつく。

そんな二人を太真はクスクスと笑いながら見つめていた。

「悟空、金蝉様」

 太真に呼ばれて二人が顔を上げれば彼女はニコッと笑い口を開く。

「家へ戻れば天蓬様も捲廉様もいらっしゃいます。沢山買っても差し障りは無いと思いますわ。悟空も前と変わらずに沢山食べると静夜から聞きま

したし、気にせずに買いましょう」

 ふわりと微笑まれ言われてしまえばそれまで。

金蝉は仕方が無いといわんばかりに溜息を吐くが、もう何も言わない。

溜息を吐く金蝉とは逆に悟空はぱあっと顔を輝かた。

「天ちゃんとケン兄ちゃんもいるの!?」

「ええ。久しぶりに悟空と食事が出来るとお話したらお二人とも嬉しそうに同席したいと」

「じゃあたくさん買わないとな!」

「そうですね。ただし、あまり詰め込んでしまってはいけませんわよ?」

「解ってる! ありがとう! 太姉ちゃん!」

「久しぶりに五人での夕食ですもの。色んな物を買いましょうね」

「おう!」

 嬉しそうに太真にギュッと抱き付いて悟空は嬉しそうにデリカテッセンの中を駆け巡っていった。

残ったのは金蝉と太真。

元気良く去っていった悟空の後姿を見て金蝉はもう一度溜息。

「どうなっても知らんぞ、俺は」

「大丈夫。どうにかなりますわ。それに食べきらなくても一日くらいはもちますもの。余ったらまた明日食べれば済むことですわ」

「…もつのか?」

「ええ。静夜から聞きましたし…実はわたくし、何度もこういう所には足を運んでいるんですのよ」

 令嬢である太真の想いもかけない言葉に金蝉は驚いたように彼女を見る。

紫電の瞳が驚きに染められたのを見て、空色の瞳はおかしそうに笑った。

「金蝉様、たまには外の空気を吸うのも素敵ですわよ?」

「……善処する」

 太真の心配そうな瞳に、金蝉は苦笑を浮かべながらも頷いた。

 

 

数分後これまた凄い量の食料を持ってきた悟空を見て金蝉は当然の如く怒り、太真はクスクスと笑った。

その日の夕食はデリカテッセンのおいしそうな豪華なものだったらしく、その日のうちに食べ終えられたかどうかは…。

想像する必要すらないだろう。

 

 

 

 

 

Fin


あとがき

久しぶりに書いたらすっごいなぁ。

と痛感しました41『デリカテッセン』。

それにしても凄いというか酷い。

悟空「書くこと自体は久しぶりじゃないのになぁ」

Webで書くのは久しぶりだからねぇ(遠い目)

悟空「んで? デリカテッセンって?」

よくデパートで見かけるじゃん、こうパックに入ってなくて自分で必要な分を取るっての。一ついくらとか何グラムいくらとかって表示してあるヤツ。

悟空「ああ!」

この間出かけたときに行ってみたらさぁ、そこで買い物をする金蝉と太真が浮かんでね。

悟空「で今回の話ってワケ?」

そゆこと、久しぶりの現代パラだ(笑)

ちなみに金蝉と三蔵は双子。静夜と太真は従姉妹って言う設定ね。

悟空のこととかは後々のお楽しみって事で。

悟空「…じゃあ早く続きを…」

脱兎!

悟空「……頑張れよー」(溜息)

 

 

2005.5.13

 

 

 

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