目覚めれば
そこには
自分の望むものが
素敵な夢を見た。
天宮での宴。
太真の焼いてくれたケーキがとても美味しかった。
楽しくて、嬉しくて…本当に幸せだった。
そんな夢の中、悟空は眼を覚ます。
金蝉は書類に目を向けながら、これから起こるであろうことを思い、溜息をついた。
もう少しで悟空が起きてくる。
そしてその枕元にある存在に気付くはずだ。
金蝉がもう一度大きな溜息をつこうとした瞬間。
「こんぜーーーーーーん!!!!!」
バンッと扉を壊しそうな勢いで開け放つ小猿。
金蝉は頭痛がする思いであった。
しかし、悟空にそれが解るはずもない。
嬉しそうに金蝉に綺麗に包まれている箱を見せる。
「見てみて金蝉! サンタさんからのプレゼント!!」
「ああ。良かったな」
興味を示すことなく悟空に言う金蝉。
悟空は金蝉の素っ気無い態度も別に気にする様子もなく箱を開けようとして、手を止めた。
すぐに箱を開けるであろうと思っていた金蝉は悟空の行動に微かだが首を傾げる。
暫く何かを考えていた悟空は急に立ち上がると金蝉の部屋を出て行った。
それに驚いたのは、金蝉だった。
「………なんなんだ?」
紫電の瞳は見開かれたままであった。
太真は目の前で包みを開こうとする悟空に一応聞いてみた。
「悟空、どうして金蝉様のお部屋で開こうとしなかったのですか?」
「だって、金蝉仕事してるみたいだったし邪魔しちゃイケナイだろ?」
太真を見ずに包みを開く悟空を見て女神は優しい笑みを浮かべた。
赤と緑のリボンに包まれた白い箱を開ける悟空。
箱の中身を見た途端に金の瞳は嬉しさに輝いた。
自分が望んだもの。
それは…
「人形…ですか?」
「うん!」
「どうして?」
「う〜ん…よく解んないんだけど、でも欲しいんだ!」
「サンタさんに人形を頼むの?」
「他に欲しいものはあるけど…でもそれは自分で叶えなくちゃいけないと思うから」
「…ナタク、のことですわね」
「へへへ…うん。でも、それは欲しいものじゃないから。約束もしてある! だから俺が一番欲しいのは人形なんだ」
悟空は嬉しそうに箱の中身を取り出した。
手にある金蝉の人形。
フェルトで出来てあるその人形は丁寧に作られていて店に売っているのではないかと思わせるほどである。
「へぇ、こりゃよく出来てるな」
「ええ、金蝉に似てますね」
「こんなに可愛くはないけどな」
悟空の手にある人形を見やれば感想を言う天蓬と捲廉。
悟空はプレゼントを見て嬉しそうに眼を輝かせている。
そして、他にも人形があったのでそれを取り出していく。
金蝉、天蓬、捲廉、太真、ナタク、観世音、二郎神……そして自分のもあった。
フェルトの人形は人の手で作られた暖かなもので悟空は笑みを消さない。
人形たちを大事そうに抱きしめる。
「ありがとう! サンタさん!!!」
嬉しそうに微笑む笑顔に太真たちも嬉しそうに笑った。
金蝉は部屋に飾られた人形を一通り見やると、太真を見た。
「どうして、悟空はこれを望んだんだ?」
「これはたぶん推測ですが…」
太真は苦笑して口を開いた。
「サンタさんがくれるものは《物》だけと思ったのでしょうね。本当に悟空が望むものはもっと別にあったのでしょうけど…
でもそれはきっとサンタさんではかなえてくれない精神的なものであったから…悟空はその望みを止めて、《物》を選んだのでしょう…。
それでもやはり自分の欲しい物をと思って…」
「それで人形、か…」
金蝉のもう一度人形を見やる。
太真もそっと人形を見る。
そして、金蝉の隣まで歩み寄った。
「幸せそうな表情ですわね、みんな」
「ああ」
「わたくしたちも、こうやって笑みをいつまでも悟空に贈りましょう。それがあの子の望んでいることだから」
「そうだな」
2人は顔を見合わせるとクスリと笑った。
「全く、アイツは物欲がなさ過ぎるんだ」
「それだけ、心が満たされているからですわ」
朗らかな空気が部屋を包んでいる。
人形たちが、それを見守っていた。
金蝉と太真が2人でいる間、悟空は天蓬の部屋にいた。
「悟空、俺ずっと疑問に思ってたんだけどよ?」
「なに?」
捲廉の言葉に悟空は読んでいた絵本から顔を話す。
捲廉を見れば、彼は悟空の方を向いて口を開いた。
「お前、太真に欲しいプレゼント言ったのか?」
「うん。それがどうしたの?」
不思議そうに首を傾げる。
「だってよ、普通の子供ならサンタに貰うプレゼントなんて他人には言わないんだぜ? それなのに悟空は太真に言ったんだろ?
何でだろうなって思っただけさ」
タバコを近くの灰皿で消して言う。
その隣で天蓬も頷いた。
「そうですよね。サンタさんは子供の欲しい物を知っているから他人には絶対に言わないものだと僕も聞いたことありますよ」
だから、プレゼントをあげる親は苦労するのだと、そう心の中で思った。
悟空は2人が何を言いたいのかを理解して頷いた。
「俺も最初はそう言ったんだけどさ、太姉ちゃんこう言ったんだ」
『俺の欲しいもの? ナイショ』
『どうしてですの?』
『だって言ったらつまらないじゃん』
『サンタさんにはお願いしたのでしょう?』
『うん』
『それなら、私に教えてくださっても…』
『う〜〜ん』
『それにもしかしたら偶然にサンタさんの頼んだものと私たちが贈るものが一緒になってしまうかもしれませんわね 』
『え……』
『そうなったらサンタさんもきっと悲しいでしょうね』
『あ……』
『悟空、どうしてもとは申しませんけどでも出来れば教えていただきたいのです』
『…うん! いいよ! 教えてあげる! サンタさんとかぶったらサンタさんも可哀相だもんな!!』
太真と悟空の話を聞いて天蓬と捲廉は顔を見合わせた。
太真の話術の凄さは知っていたが…。
「流石だよな」
「太真は子供好きですし…子供の心理を僕らよりも理解してますからね」
「そーだな。ったくスゲー女神様だぜ」
薄く笑う天蓬と頭を掻きながら苦笑した捲廉を見て首を傾げる悟空。
「どうしたの2人とも、なんかあったのか?」
心配そうに聞くと、2人は首を同時に振った。
「いいや、なんでもないぜ」
「大丈夫ですよ」
ニコッと笑う2人を見てますます首を傾げる悟空。
ちょうどそのとき天蓬の部屋をノックする音が。
「天蓬、入るぞ」
「天蓬様、お邪魔しますわ」
扉を開けたのは穏やかな表情の金蝉と優しい笑みを浮かべている太真。
それは、まるでサンタクロースからの贈り物の人形のようで。
悟空は嬉しそうに微笑んだ。
金蝉たち、ここんところ笑ってない。
だから、笑った金蝉たちが欲しい。
でも、そんなのは絶対に無理だろ?
だから、笑ってる金蝉たちの人形が欲しかったんだ。
ありがとう、サンタさん。
素敵なプレゼント。
本当にありがとう。
俺、当分の間はいい子にしてるよ。
それが俺がサンタさんに贈る贈り物。
「そういえば、先ほど雪が降り始めましたわ」
「え!? ほんとう?」
「一日遅れのホワイト・クリスマスですね」
「ま、今日が本当にクリスマスだし。いいんじゃない?」
「寒くなるな」
「積もるといいな!!」
「そうですわね」
「積もったら雪で遊びましょうね」
「雪合戦でもするか?」
「誰がするか」
願わくば
この穢れなき雪のように
優しいこのときが
永遠に続きますように
それが
だれもが
望むこと
Merry Christmas!!
あとがき
本当のことを言います。
悟空の欲しいものがみつかりませんでした!
金蝉「だからこんなに駄文なんだな?」
天蓬「しかもやっぱり暗いですしね。最後」
捲廉「せっかくのおめでたい日だってのに」
ス、すいません…。
でも、悟空って物欲なさそうなんだもん!!
ってかないし!!
悟空、本当にゴメンね?
悟空「良いよ、anamが変なの書くのは昔からだし」
ぐは!!!
皆さんは素敵なクリスマスを送ってくださひ。
2002.12.24