たとえば、
もしその人がそこにいなかったら
自分の辿って行こうと決めた道は大きく変わっていたかも知れない
そんなふうに思わせるあいつに
これを贈ろう
「やる」
「………なんだこれは?」
「なんだ、て…見れば分かるだろ? チョコ以外の何に見えるのさ」
「突然部屋に入ってきたかと思えば、こんなもんを突き付けるのか?」
「うるさい、ひそかに甘党のくせに」
「………!!!」
突然部屋に入ってきた静夜が突き出した包みを見て三蔵が顔を顰めいたが、彼女とのテンポのよい言葉の掛け合いにその表情が微か
に赤くなっていた。
彼の珍しい表情見ることが出来たためか、静夜はにこっと笑顔を浮かべる。
三蔵は赤くなったことに腹が立ったのか舌打ちをすると静夜の手に持っていた包みをひったくった。
そんなどこか子供じみた行動に静夜は今度こそ声を上げて笑ってしまった。
三蔵はもう一度舌打ちをすると静夜を睨んだ。
黄昏色の瞳が鋭い光を帯びて瑠璃の瞳を直視する。
大概の人間が思わず目を逸らしてしまいそうなほどの眼光を真っ直ぐに受け止め静夜は笑うのをやめた。
その顔には微かに笑みが残っていたが。
「ごめんごめん。あたしが悪かった」
「…ったく、こんなくだらねえモンを突き付けやがって」
「そーゆー言い方する? 人がせっかく感謝を込めたチョコに向かってくだらないって言うのか。
三蔵らしい言い方だけど、なんか気に障ったぜ、今のセリフ」
「俺に感謝なんかしてんのかテメェは?」
「うん」
眉間にしわを寄せる三蔵を見て静夜はあっさりと頷く。
頷かれたほうは盛大なため息をつくと黙ってしまった。
――どんな感謝だ、言ってみろ。
沈黙の言葉が静夜の耳に入ってくる。
それを聞いて静夜は目を細め、口の両端を小さく上げた。
「傍にいてくれていること。それがあたしが貴方に贈る感謝だ」
「今のあたしがココにゾンザイしているのは三蔵がいたから。貴方が悟空を見つけ、長安にいてくれたお陰であの時あたしは三蔵と悟空に
逢えた。まあそういう理由で言えば悟空にも同じコトが言えるけど……でも貴方がここにいなければ、
今のあたしもココには存在できなかったんだ。傍にいてくれたから、あたしはイマここにいる。そういう理由で三蔵に感謝を贈ったってコト。
わかった?」
「………くだらねえ感謝だな。お前がここにいるのは俺の所為じゃねえ。お前が自分で決めてきたことだろうが。
自分の歩く道を、自分で決めただけのことだろ? そんなもんで感謝されたくねぇよ」
「あはは、やっぱ三蔵だな。確かにこの道はあたしが勝手についてきただけのことだけどさ、でもその根本には三蔵や悟空たちの存在
が傍にあったからなんだって事は理解してるんだ…傍にいてくれる人に感謝を。だから贈った、それだけ」
「自己満足だな、それは」
「いいんだよ。今のあたしにとってのバレンタインなんて自己満足のためのイベントなんだから。そのうちに村の姉様たちみたいな感情
で贈れるようになれればいいんだけど」
「一生無理だな」
「はあ? なにそれどーゆー意味さ」
三蔵の言葉に静夜は眉間にしわを寄せた。
明らかに不機嫌となった静夜の表情を見て三蔵はフンと鼻で可笑しそうに笑うと近くにあった新聞を読み始めた。
質問の答えを無視されてますます静夜は顔を顰めたが、不意に薄く笑ってしまい三蔵の部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
――……………。
ぼそぼそと聞こえてきた声に静夜は一瞬驚いたように三蔵を顧みた。
しかし、三蔵は新聞を読んでいて静夜の方へ顔を向けようとはしなかった。
窓からの夕日で顔を赤く染めている三蔵をくすっと笑って見てから静夜は部屋を出る。
出会うことが無かったら本当にココにはいなかっただろう
そう思うと、やっぱり出会えたことはとても偉大なことだと思うから
だから感謝を
出会えた事への感謝を
貴方に贈ろう
Fin
あとがき
なんかプロポーズみたいだね〜〜〜。
Σ(@■@) 殺気!!! 逃げねば!!!!
三蔵「待ちやがれ(怒)」
いや〜〜〜ん!! 何故にそんなに怒ってるですか?
三蔵「貴様が書くのが駄文だからだ!!!!!」
そんなのいつものことです。
三蔵「最悪だ!! 今まで以上にな!!」
最後なんだからいいじゃん!!
三蔵「…………………死ね!!!!!!」
魔天経文!! や〜〜〜〜〜〜〜だ〜〜〜〜〜〜!!!
2002.2.27
改稿 2005.11.5