気を遣いすぎるって言うのとは

少し違うかもしれないけど

でもどっか引いてるから

気を遣ってくれてるから

コレはほんの労い

気遣いすぎの友への

 

 

 

Thanks Valentine  Green Eyes

 

 

 

「八戒、入って良い?」

「どうそ」

 静夜が八戒の部屋に入ってくるとテーブルの上には紅茶が出ていた。

静夜は驚いたように八戒を見ると彼はにっこりと笑う。

「悟空が嬉しそうな顔をして三蔵の部屋に入って行ったのを見たので次に来るのは僕かなって思ったんです」

「…良かったな。当たって」

「ええ。って言うか、もう決まってるようなものだと思うんですけど?」

 八戒が目を細めて聞いてくると、静夜は曖昧に笑った。

静夜の行動パターンは時に凄く分かりやすい。

物を渡すとき最初に渡すのは悟空、次に八戒、悟浄。

最後に三蔵と言う具合だ。

「だってさ、三蔵にモノ渡すのってスッゲー神経使うんだぜ。出来れば最後が良いって思はあたしだけ?」

「三蔵はあまり他人から物を貰いたがりませんからね」

 静夜の言葉に八戒はクスクス笑いながら答えた。

そしてテーブルの上を指差す。

「飲みませんか? 宿の女将さんがくれた珍しい紅茶の葉らしいですよ」

 

 

 

「はい」

 紅茶を一口飲んでから静夜は八戒の前に綺麗に包まれ包みを置いた。

八戒はそれを手に取り、中身を開くとそこには一口サイズのチョコが沢山入っていた。

「ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」

 八戒が頭を下げたのを見て静夜も頭を下げる。

「食べてもいいですか?」

「いいよ。とりあえず味に支障は無いから」

「分かってますよ」

 悪戯好きの子供のような笑みを浮かべて言う静夜に八戒はそんな子供の悪戯をおかしそうに見ている教師のような笑顔を浮かべた。

そして包みに手を入れてチョコをひとつ取り出すと口に入れる。

「美味しいですよ。ありがとうございます」

 食べたチョコを飲み込んでからにっこりと笑顔を見せた。

その後その笑顔のままで言葉を紡いだ。

「で、僕にはどんな感謝を入れてくれたんですか?」

 その台詞に静夜は驚いて目を大きくしたがそのうちにやれやれと肩を上げ、ニッと口の端をあげた。

「悟空から聞いたな?」

「ええ」

 笑顔のままで答える八戒を見て静夜はその答えをすぐに口に出した。

「気を遣ってくれてる感謝と労い。それがあたしが贈る八戒への感謝」

 

 

 

 

「………僕、気を遣ってますか?」

 静夜の答えを聞いて八戒はしばし呆然となった。

かろうじて出た言葉は静夜を呆れさせる。

「自覚無いワケ?」

「ええ」

「…………だろうな」

 全く自覚なしの八戒を見て静夜は苦笑した。

まあそうでなければ、気を遣うなどということをしないだろうから。

これは八戒の性分か、と思い静夜は目の前にある紅茶を指差す。

「これ、あたしが来ると思って出してくれたんでしょ?

それって八戒にとっては何てこと無い行動だろうとは思うんだけど、あたしにしてみれば気ぃ遣わしてるって思うわけ。

他にも八戒ってさ、人に気を遣うって事よくあるんだよな」

 たとえば悟浄が一人で勝手にカミサマのとこ行ったときとか。

そう言うと八戒は恥ずかしそうに頭を掻いた。

「あのときの悟浄の気持ちは止められないものでしたからね。行かせてあげるのが一番いいと思ったんです」

「まあ、そのお陰でみんなマジギレして来た道戻ったけどな」

 そのキレた瞬間の3人を見ていた静夜は、とばっちりを受けていた間の悪い敵に同情を思わず送っていたのを思い出し、

おかしそうに思い出し笑いを浮かべていた。

八戒もどこか乾いていたが笑顔を浮かべていた。

彼の笑みを見て静夜はズイと八戒の顔を覗き込んだ。

「まあ…あれも含めてさ、八戒はあたしたちにいつもイロイロ気を遣ってくれてるから、今まで気を遣ってくれてありがとうって

意味でコイツを贈ったんだ。それとこれからもよろしくって意味も入ってる」

 包みを指差しにこっと笑う静夜を見て八戒も微笑を返す。

「ありがとうございます」

「これからもあんまり気遣いすぎず、らしくやっていこうな」

「そうですね」

 

 

 

 

本人には全く自覚が無いのはわかってた

だってみんなして好き勝手足ってるから

だからあいつの気遣いの性格も元のモノだってことは判ってたんだけど

でも、それが過ぎるときは必ずあって

それにあたしたちは甘えてるところあるから

だから、感謝を贈る

 

 

 

 

 

己らしく、気を遣う友に

 

 

 

 

感謝を

 

 

 

 

 

 

Fin

 


あとがき

八戒への感謝は気遣いへの感謝って事でした…………気、遣ってるよね?

八戒「何で僕に聞くんですか?」

いや、なんか気を遣ってるようにも見えないときあるし…ちょっと違ったかなと思ったから。

八戒「嫌だなー、僕はいつだって三蔵たちに気を遣ってますよv」

………………………そうだね

気を遣ってるね。

イロイロと………

 

 

2002.2.25

改稿 2005.11.5

 

 

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