拍手ログSS
素朴な疑問。/千日紅/LEAD BULLET/ブッシュ・ド・ノエル/目標確認
静夜が散歩と称して三蔵を街へと引っ張りだしたある日のこと。 傍から見ればデートだろ、と思える二人の行動に笑いながらその発言をかましたのは悟空だった。 「なあ…三蔵と静夜っていつから付き合ってるんだっけ?」 「は?」 「えっ?」 悟浄と八戒の目が丸くなる。 目を丸くする二人を見つつ悟空は話を続ける。 「あの二人が付き合ってるって言うのは解るんだけど、でもそれがいつか俺覚えてねぇんだよなぁ」 悟空の言うとおり、三蔵と静夜は付き合っている。 二人の性格からか傍から見れば付き合ってるように見えないくらいにその関係はアッサリとしていた。 しかし、ふとした瞬間に互いの想いがとても深いところで繋がっているんだと感じ取ることが出来るのだ。 人に必要以上、寄りかかることを嫌う二人。 互いの背中を守りながら対等に愛を育んでいく二人の関係は時折とても羨ましくなる。 「そういえば、そうですね」 八戒が頷く。 三蔵と静夜との付き合いは結構長いといってもいいだろう。 その長さ故か、別に本人たちが何も言わずともその雰囲気で大体の状態を察してしまう。 二人が付き合いだしたのは最近のことではない。 ある時ふと「ああ付き合っているんだな」と感じたのが最初だった。 その後で静夜から「付き合ってる」と言われてにっこり笑顔で「知ってますよ」と答えて彼女を苦笑させたことを思い出した。 「しらねぇ間に二人が付き合ってるって公認してたよな、俺ら」 「だろ? だから俺気になっちゃってさ」 悟浄が紫煙を吐きながら言うと悟空が首を捻りながら答える。 今まで別に困ることでもなかったので考えなかった素朴な疑問。 付き合ってると解ってはいたが、どれが一体いつから始まったのだ? 本当に素朴すぎる疑問だがそういうものほど気になりだすと止まらないもので。 『う〜ん』 3人が3人で首を捻っていた丁度そのとき。 「ただいま〜…ってお前ら何してるんだ?」 静夜と三蔵が帰ってきた。 静夜は悟空たちが揃って首を傾げていることに驚きどうしたんだと聞けば、 「なあ静夜?」 悟空が恐る恐るといった感じで口を開いた。 「なに?」 何でそんなに怖がるような口ぶりなのだろう? ただひたすらに理解不能の行動をする悟空に心の中で首を傾げる静夜。 「あの、今更で本当に悪いんだけどさ」 「だから、なに?」 はっきりとしない悟空の態度に静夜が呆れた口調になっていく。 悟 空は後ろにいる八戒と悟浄をチラリと見やると意を決したように静夜に聞いた。 「静夜と三蔵っていつから付き合い始めたんだ?」
帰ってきた二人と見た瞬間思ったのだ。 解らないのなら二人に直接聞けばいいと。 しかし、思い切りプライベートなことなのではっきり聞いてもよいものか迷ったために歯切れの悪い言葉になってしまった。
「今さらだろ」 静夜にこう返されること覚悟で悟空が聞けば、静夜と三蔵は驚いたように顔を見合わせる。 短いような、長い沈黙が続く。 静夜はじっと三蔵を見つめていたがそのうちに柳眉を顰め始め、おもむろに口を開いた。 だが、それは悟空たちの望む答えとははっきり言ってとても程遠いものであった。 「……………いつからだっけ?」 「……………覚えとらんな」
Fin あとがき 拍手SSです! SSSでも通用するかも。 家の最遊記カップリングは三蔵×静夜(略して三静)なわけですが。 はっきり言っていつからこの二人付き合ってるのか、本人にも解っていません。 悟空「おい!」 知らない間にお互い好きなんだなぁって思ってハッキリとした告白もなしに付き合い始めたみたいな感じが希望なので(笑) 悟浄「熟年カップルかよ」 そんな感じ(爆笑) いいじゃん、素敵だと思うよ。 いつかハッキリとした告白劇が書けるといいんだけどね。 八戒「貴女の文章力じゃ無理でしょ?」 三蔵「現にこれも駄文だしな」 ……………ウルサイやいっ!(T_T)
2004.4.14 |
赤や白や桃色の丸い小さな花。 中には紫もあったりして、とても綺麗な彩りの花を束にして静夜はそっと宿から出た。 出かけてくると三蔵たちに声をかけたとき。 「こんな夜分に、どうしたんですか?」 八戒が声をかけてきて、静夜は苦笑しながら答えた。 「今日、母さんの誕生日でさ。丁度いい具合に母さんの生まれ月も出てることだし久しぶりにプレゼントでも贈ろうかなって」 数年前に野盗に襲われ自分を庇って死んでしまった母。 今まで生きていくことに精一杯だった自分がやっと振り返ることが出来るようになって。 振り返るなんて信条じゃないけど、でも今自分がここにいるのは、母と父のおかげだから。 静夜は苦笑を浮かべたままそう言い、三蔵たちの部屋を後にした。 きっと彼らのこと…特に三蔵は何を馬鹿なことをと思うだろう。 それでも構わない。 自分がしたくてやることなのだから。 静夜は満月の光が降り注ぐ広い場所へ出ると空を仰いだ。 そっと心の中で祝詞を唱えると淡い笑みを浮かべて静夜は満月へと語りかける。 「満月に話し掛けるなんて、もう何年ぶりかな」 静夜は小さな花束を月に差し出す。 「千日紅、母さんが好きだった花。折角の誕生日だしね。探して摘んできたんだけど…どうかな」 巫女の授業が得意ではかなかった静夜が唯一好きだった己が母の教えてくれたもの。 「この花の花言葉は今でもよく覚えてる」 月の光がまぶしくて、静夜は眼を細める。 「今じゃ、あたしの好きな花の一つになってるの。だから母さんに届けようと思って」 風が吹く。 とても強い風が。 好機だ。 静夜は花束を月に向かって上げるとその手を離す。 彩りどりの花がまるで月に向かって飛んでいくように風に乗って消えていく。 静夜は淡く微笑んで月に向かってこう囁く。 「誕生日、おめでとう。母さん。私を生んでくれて、ありがとう」
宿に帰ると珍しいことに三蔵が入り口の前に立っていた。 「三蔵…?」 あまりの珍しさに静夜が眼を丸めていると三蔵はフンと鼻を鳴らして踵を返した。 「行くぞ」 それだけを言い残して彼はさっさと宿に戻ってしまった。 静夜はますます唖然とし、 「何しに来たのよ?」 と思ったがそのうちに笑うが込み上げてきた。 今にも吹き出しそうな顔で静夜も宿へと戻っていく。 「もう三蔵ったら心配なら心配だって言ってくれりゃいいのに」 「!! 誰が言うか貴様!」 静夜の笑い声と、三蔵の怒鳴り声が宿中に響くのだった。
千日紅…安全・変わらぬ愛情・不変の愛・無事
Fin あとがき 静夜の誕生日は九月ではないので(爆) でも誕生日というのは、生んでくれた親に感謝する日でもあるから。 だから、心からの感謝の言葉を。
2004.9.17 |
三蔵の誕生日は予想通り準備が整うのと同時に宴会と成り果てた。 無論、三蔵本人は祝ってもらうのはゴメンだったのでコレで良かったと思っているが。 誕生会と称した宴会が終わり悟空たちが部屋へと戻り、一人静かに部屋のベッドで煙草を吸っているとコツコツとノックの音。 「誰だ?」 「あたし。入っていい?」 誰何を問い、返ってきた声は静夜だった。 思いもよらなかった訪問者に三蔵が唖然としていると沈黙と肯定をみなしたのか静夜が勝手に部屋に入ってきた。 「おい。まだ誰も入ってこいとは…」 「まあ細かいことは気にしない気にしない。コレあげるからさ」 いきなり入ってきた静夜を睨みつける三蔵だが、彼女に効くはずも無く。 静夜は三蔵が座っている隣に腰を落としつつとある箱を三蔵に渡す。 「なんだ、これは?」 渡された箱を訝しげに見る三蔵に静夜が一言で返す。 「誕生日プレゼント」 「……ケーキはどうした?」 昼間の出来事を思い出し眉間に皺を寄せつつ聞いてくる三蔵に静夜はきょとんと目を丸めた。 「あれは皆で食べるものでしょうが。これはあたしから三蔵にって個人的なもの。 ――まあ言いたいことも解るけどさとにかく開けて見てよ。後悔はさせないから」 自信満々に言われ、三蔵は一瞬呆気にとられたがそこまで言うのなら、と箱を開け…目を見開いた。 「お前…」 「どう、気に入った?」 目を丸めて驚く三蔵に満足そうに笑い聞く静夜。 三蔵の目の前には色に鈍色に光る銃弾。 それもかなりの趣向を凝らした。 幼い頃…金山寺を出てすぐに倒れてしまった自分を介抱してくれた、黒い髪と黒い服を着たあの鍛治師を思い出した。 「素敵でしょ? あたしも偶然見つけたんだけど、なんか…彼が貴方にくれた銃弾を思い出して」 三蔵の考えていたことを静夜も思ったのだろう、彼女も今彼を思い出し三蔵に話しかける。 しかし彼はただ、呆然と目の前にある銃弾を見つける。 「―――――」 そして、ポツリと言った言葉。 あまりにかすかで聞き逃すかと思われた言葉はきちんと静夜に届いていた。 「うん、喜んでくれて良かったわ」 「………ああ」 ようやく銃弾から目を離すと三蔵にしては珍しく本当に嬉しそうに薄く笑って静夜を見つけたのだった。 静夜は笑ってくれた彼に微笑むと昼間言えなかった言葉を紡いだ。 「誕生日、おめでとう。三蔵」
HAPPY BIRTHDAY Gnzyou sanzou! あとがき 拍手ありがとうございます! Novelにある三蔵誕生日の続くといえばそういえる代物(微妙な説明)。 銃弾をプレゼント、というのは結構前から決まってたんですが…静夜が迫ってきました(爆) 本当はあの話にくっつけたかったのだが、それでは変に長くなるし繋がりもないのでここに置かせて頂きました。 これでなりきり100題に添えるのでホッと一息(笑) 話の途中に出てきた黒い服に黒髪の鍛治師は…小説をお持ちの方なら誰でも解るでしょう、彼です(笑)
2004.11.29 |
正直言って、デカイ。 静夜は呆れたように盛大にため息を吐いた。 対して、静夜の隣にいる太真はとってもご満悦である。 二人の目の前にはブッシュ・ド・ノエル。 しかし、普通のブッシュ・ド・ノエルでは無い。 大きいのだ。 普通に店に置かれている物よりも明らかに大きい。 長さ、大きさも普通の2倍があるだろう大きさに静夜は訝しげに隣に立っている従姉を睨んだ。 「太真。こんな馬鹿デカイの一体どうしたんだ」 「作ったんですよ」 返ってきたのは楽しそうに弾ませる声。 静夜は思わず額を押さえた。 「だから…あたしが聴きたいのはなんでこんなデカイ、ブッシュ・ド・ノエルを作ったんだってこと」 こんな大きいもの、一般家庭においてあるオーブンでは絶対に無理であるし、こんなに大きくする必要も無い。 嫌な予感を感じつつも静夜はもう一度太真の方へと顔を向けた。 太真の表情はとっても輝いている。 「この間、学校帰りの悟空と偶然お会いしたんです。そのときに悟空が大きなブッシュ・ド・ノエルを食べたいを仰って…。 それを金蝉様にお話してみたら厨房を貸してくださるとのことで早速作ってみたんです」 なんのてらいも無い太真の答えに静夜は今度こそ頭を抱えた。
道理でこの間、悟空が嬉しそうな顔をして帰ってきたと思ったよ。
久しぶりの保護者の一人に出会えたのと、巨大ブッシュ・ド・ノエルの約束を取り付けたのだ。 そりゃ、機嫌も良くなるだろう。 オーブンにしてもそうだ。 金蝉の家の厨房はデカい。 さすが一流企業の重役の家だ、厨房の大きさも只事ではない。 当然オーブンも大きいものを常備してある。 それを使えばこれくらいの大きなケーキなど、造作も無いことだろう。 急に来てくれと連絡が着たから何事かと思って来てみれば…。 静夜はふうと息を吐いてから手にしてあったフォークでザックリとブッシュ・ド・ノエルを刺しぱくりと一口。 「…………砂糖が足りない」 「やっぱり」 静夜の言葉に太真は頬に手を当てて残念そうに呟いた。 基本的に悟空や三蔵を筆頭に甘党が多い面々だ。 これくらいの甘さでは納得しないだろう。 「でも、大味になってないのは流石だよ。相変わらず上手だよな」 静夜の言葉にふわりと太真は笑った。 「ありがとうございます。静夜にそう言ってもらうと嬉しいですわ」 笑う太真に静夜も口の端をあげて笑うとブッシュ・ド・ノエルへと目を向けた。 「本番は明日。いまから作り直しだな」 「そうですわね。静夜…」 ジッと自分を見つめる太真も視線の意味を当然静夜は解っている。 「解ってるって。手伝うよ」 「ありがとうございます」 太真の言葉に手を振ることで答える静夜。 「まあ、とりあえず今やることはこれをあたしら二人で完食することだな」 目の前にはとっても大きい砂糖の足りないブッシュ・ド・ノエル。 「とっても甘いココアでも用意して、少し早ですけどおやつにしましょうか」 「賛成」 青い髪の少女二人はにっこりと顔を合わせて笑った。
次の日。 金眼の子どもが嬉しそうに完成したブッシュ・ド・ノエルを頬張っていた。
Merry Christmas! あとがき 拍手ありがとうございます! 最遊記&外伝の現代パロで静夜と太真でした。 補足として現代パロの静夜と太真は従姉妹同士です。 ちなみに甘党なのは三蔵、金蝉、静夜、太真。 悟浄、捲廉、天蓬は辛党で八戒はどっちも平気。 悟空はとにかく何でも食べます。
2005・12・23 |
「ってかなんでこんな人ごみの多い神社で初詣?」 「仕方ないだろ? 近所の神社ってここしかなかったんだから」 「俺腹減ったぁ」 「これが終わったら美味しい物でも食べに行きましょうね」 「やりぃ!」 「今年もチビザルは食い気か」 「なんだよ悟浄ケンカ売ってんのか?」 「ほらほら新年早々ケンカはしないでくださいね」 「いい加減ウゼェ」 「ほら三蔵もう少しで境内だから頑張って」 「元はといえばお前が悪いんだぞ」 「私のどこが悪いってのよ?」 「言いだしっぺは静夜ですもんね」 「皆で初詣に行くぞーってな」 「なんで初詣に行こうって思ったんだ?」 「別にいもしない神に何を願ったって叶うわけでも無いだろうに…」 「あたしはべつに神様に出来ないことを叶えてくださいってお願いしに行くわけじゃないよ」 「願うことは自分の力で叶えないとな」 「そういうこと。私が初詣に来るのは目標再確認のため」 「目標再確認、ですか?」 「せっかくの一年に一回の行事なんだしさ、こういうときに自分のやるべきことを整理して気持ちを新たにするのも、 良いんじゃない?」 「静夜らしいねぇ」 「なんか文句ある、悟浄?」 「うんにゃ、静夜らしくてイイんじゃない?」 「目標再確認かぁ」 「それなら、文句は言えませんよね三蔵?」 「……好きにしろ」 「ありがと。…でもまあ今年も変わらずただひたすらに落ちる太陽めがけて走り続けるだけなんだろうけどな。 ま、それもまた良しってことか」
Fin あとがき 拍手ありがとうございました。 最遊記で三蔵ご一行でした。 誰が誰だか、わかりますか?
2006.1.1 |