小ネタ ログ
夕暮れ苺/静夜、誕生日小話/バレンタイン小話/静夜誕生日 2009/
「「あ…」」 夕暮れの商店街。 家への帰り道を歩いていた三蔵は目の前でスーパーの袋を持っている青髪の同居人と鉢合わせた。 青髪の少女も三蔵に気づいたらしく、奇しくも二人は同じタイミングで声を上げたのだった。
「なんつーか、タイミングがすっごい悪いよな三蔵って」 すくすく笑いながら静夜は隣を歩く金髪の男を見て笑った。 手には夕食に必要な材料が入った袋。 ぶらぶらと揺れる袋をを見つつ男は静夜を睨んだ。 「悪かったな」 「や、悪いわけじゃないんだけど…」 男の睨みなどなんのその。 静夜は笑みを消す事なく商店街を歩いていく。
三蔵がなんとなく静夜の後を追っていくと、行きついたのは果物屋。 「おい」 「んー?」 三蔵の声は心なしか低くなっているのにも拘らず静夜はとある果物を物色している。 「なんでそんなもんを見てるんだ」 三蔵の視線の先には、旬の大きく外れた苺。 季節柄、これからが大いに活躍するだろう苺を静夜は真剣な目で見ている。 「悟空がさ…」 真剣に見つつ律儀に答えようとしているのだろう、静夜は自分の被保護者の名前を出した。 「学校帰りに苺買って来いっつったのに、忘れて帰って来てさ。 しょうがないから飾り付け後にして、晩飯の買い物ついでに買ってこようって思って…」 「飾り付け? 何の事だ…?」 静夜の言葉に疑問を感じ三蔵が器用に片眉を上げる中、良い苺が見つかったのか、静夜が苺の入ったパックを一つ手に取った。 そして、くるりと三蔵の方を向くと、 「誕生日ケーキ」 にこりと、笑った。 「………くだらねぇ」 にこやかに、嬉しそうに笑う静夜の顔を見て三蔵は思わず呟いていた。 「お、流石に今年は覚えてたか」 聞きようには酷い言葉ではあるが、静夜には関係なかったらしく、むしろ楽しそうに三蔵の顔を覗き込んできた。 ニヤニヤと笑う静夜を見て三蔵は彼女を一睨みした後、小さくため息を吐いた。 「当たり前だ。去年忘れたせいであんなに五月蝿く騒がれたんだ、嫌でも覚える」 去年の事を思い出しているのか三蔵の眉間の皺は深い。 それを見て静夜はますます笑みを深めた後、苺を手にレジへと向かった。
日もすでに落ち、薄暗い道を金髪を青髪が肩を並べて歩いていく。 「三蔵」 青髪が声をかけると金髪は視線だけを青髪に向ける。 金髪の視線が自分に向いたのを感じると、青髪も金髪の方を向いた。
「誕生日、おめでとう」
あとがき 2006/11/29 (BBSにて) |
濃紺の髪を彩るは…
「あげる」 そう言われて手渡されたのは、ガラス細工。 小さい掌にすっぽり納まるそれは、赤とも朱とも言いがたい、複雑でしかし美しい色を映し出す。 「キレイ…」 静夜は手渡されたガラス細工を空にかざす。 赤いそれを見つめる瑠璃の瞳はキラキラと輝いていて、彼女はくすりと笑った。 「良かった、喜んでもらえたみたいで」 「……もらっても良いのか?」 ガラス細工から目を離し、静夜が彼女を見れば、彼女は頷いた。 「アンタの髪にはそれっくらいの色が似合うと思ってね」 彼女はすばやく静夜の手からガラス細工を引き抜くと、これまたすばやく静夜の濃紺の髪を結い纏め。 ガラス細工を静夜の髪に通した。
濃紺に朱赤が映える。
静夜は驚いたように目を見開いたまま首の後ろで一纏めになった髪に触れると、目の前にいる彼女を見上げた。 「髪飾り…」 「そ!」 「……なんで?」 髪飾りに指先を触れさせたまま静夜が首を傾げて問うと、彼女は笑った。 「誕生日、でしょ?」 「………あ」 とても楽しそうに笑う彼女を見て、静夜は今日が己が生まれた日だと思い出した。 指先にガラス独特の冷たさと目の前にいる彼女の視線の暖かさに、静夜ははにかんだ笑顔を浮かべた。 「ありがと…」 静夜の言葉に、彼女は首を横に振る。 「いいって。その髪飾り、誕生日祝いでもあるけど、アンタがアタシを『母さん』って呼ばなくなった記念の物でもあるんだから」 だから、そんなに気負いすることはないのよ。 そうしたり顔で笑う彼女に静夜はつい最近の昔の事を思い出し、ウッと息を詰めた。 仕方がなかったとはいえ、アレはかなり気分の良い思い出ではない。 嬉しさと申し訳なさが入り混じった複雑な表情を浮かべていた静夜を見て。 彼女は笑うと、ポンと静夜の頭を撫でた。 頭を撫でられたのは随分と久しぶりのことで。 静夜は驚いて彼女を見ると、彼女は微笑んでいた。 「誕生日おめでと、静夜。よく似合ってる」 彼女の言葉は暖かくて。 静夜は微笑んで頷いた。
静夜は腰まである長い髪をすばやく丁寧にまとめると。 真っ赤な髪飾りで結い纏めた。 幼かったあの時に、彼女に貰った髪飾りはボロボロになり、髪を結い纏めることは適わなくなった。 しかし、それでも彼女から貰った最後で最初の贈り物は。 今も大切に静夜と共にある。
静夜は旅の宿の窓から空を見上げた。
今日は己が生まれた日。 それにかこつけて、彼らは宴会を始めるのだろう。 だが、今の自分たちにはそれが相応しい。 きっと、祝いの言葉は貰えるのだろうから。
静夜は朝日の昇る空を見たまま口を開いた。
「誕生日、夢で祝ってくれてありがと、……」 小さく、小さく口の中で彼女の名を呼び。 静夜は昇る太陽に背を向けて、部屋を出て行った。
きらりと、赤い髪飾りが太陽に映り、光った。
あとがき 静夜、誕生日おめでとう!! 物語中に出てきた《彼女》というのは過去の静夜の支えであり、母親とはまた違う多くの影響と思いを残してくれた人です。 サイト開設6年目、静夜の過去をそろそろ明るみに出していこうかと、現在再構築中です(苦笑)
2006か2007/06/17 (BBSにて) |
静夜「今年のバレンタインはチョコレートケーキです」 悟空「うわー! ウマそう!」 悟浄「ってか最近ケーキ系多くね?」 静夜「だっていちいち小分けに作るのメンドイんだもん」 八戒「そうですねぇ。僕たち何だかんだでしょっちゅう会ってますし」 静夜「そうそう。しかもあたしの手間もコストも削減出来て一石二鳥。それに去年は普通にチョコ作って渡したんだから文句言うな」 悟空「確か…太姉ちゃんがケーキだったんだよな」 静夜「流石に被るのはお互い良くないしな…。コレでも色々考えてるんだぜ?」 悟浄「あー。解ったよ、俺が悪かった! …それにしても見事に茶色一色だな」 悟空「上に何にも飾り付いてないもんな。ホール丸々チョコだけってある意味スゲェ」 静夜「見たはね。でも中にベリー系をふんだんに突っ込んであるからサッパリ食えると思うよ」 八戒「二層に分けてあるんですか?」 静夜「そう。ショートケーキみたいに真ん中に苺とかグランベリーとか色々入れてみたら結構美味くてさ。味には自信あるから大丈夫」 悟空「静夜の作るお菓子は激ウマだからな、期待してるぜ!」 静夜「悟空のお眼鏡には叶うと思うよ」 悟浄「……で、さっきから一言も喋ってない三蔵様は一体何がそんなに気に入らないんだ?」 三蔵「…………」 悟空「三蔵?」 三蔵「…………なんで彼らがここにいるんだ?」 悟空「へ?」 八戒「あー…」 悟浄「そういえばそうだな。何でいるのおふた方?」 天蓬「いやー、久しぶりに悟空の顔でも見るついでに静夜さんのケーキをご馳走になろうと思いまして」 捲廉「ちょっとだけ食わせて欲しいと思ったんだよ」 天蓬「静夜さんのお菓子の評判は悟空や太真から常々聞いてましたからね」 捲廉「どーせ悟空用にデカいサイズで作ってあるんだろうと思ってな。悪いなカレシ。カノジョのケーキの取り分少なくして」 三蔵「そう思うなら何故来た」 悟空「あ、彼氏ってセリフ否定しなかった」 八戒「流石に付き合い長いですからね。これで否定したら三蔵の男としての度量が試されますよ」 悟浄「三蔵も成長してるんだなぁ、感心感心」 三蔵「殺すぞお前ら…!」 悟空「てーか何で二人だけなの? 金蝉と太姉ちゃんは?」 静夜「お、ナチュラルにスルーしたな今」 三蔵「………」 悟浄「―――――お前、そこは察してやれよ」 悟空「ん?」 静夜「太真と金蝉はデートしてんの。久しぶりに二人っきりで」 悟空「……ああ! 静夜と三蔵がしてなかったから気付けなかった」 三蔵「俺たちのせいかよ」 静夜「あたしらは基本いつでも出来るからな、別に今日やんなくてもいいけど…」 天蓬「あの二人、最近仕事忙しかったですから。久々にゆっくり出来て良いと思いますよ」 捲廉「俺、あの二人がデートしに行くって聞いた時、嬉し泣きしそうになったぜ」 静夜「金蝉と太真の二人は熟年夫婦みたいな雰囲気を醸し出してるからな」 悟浄「まだ結婚もしてないのにか?」 三蔵「コイツの世話で半分親子みたいな経験してるからだろ?」 悟空「え? 俺?」 天蓬「確かに悟空は僕たちにとって年の離れた弟か子供みたいな感じですからねぇ」 捲廉「特にあの二人は悟空の事本当の子供みたいに扱ってた時あったからな」 静夜「それで、二人の雰囲気も夫婦みたいになってるんだよな」 悟空「俺のせい…」 静夜「悟空気にするな。あの二人はそれで十分幸せだから」 三蔵「むしろそれで満たされてるからな」 八戒「良い事ですね」 悟浄「ま、二人が良いならそれで良いだろ」 天蓬「久しぶりに恋人気分を満喫してくると太真が言ってましたから大丈夫ですよ」 捲廉「俺ら宛てのチョコは明日だってよ。今年は生チョコ+αだと」 悟空「マジで! スッゲェ楽しみ!」 八戒「太真さんもお菓子作りが上手だと聞いてますから、いつか食べてみたいですね」 静夜「今度貰ってくる?」 悟浄「お、それいいな。頼んだ」 静夜「了解。それじゃあ、話も纏まったところで」 三蔵「食べるか」 悟空「おっしゃー! たくさん食べるぞー!」 静夜「食いすぎには気を付けろよ」
あとがき バレンタインネタ。まさか思い付くとは思いませんでした(笑) 一応何かないかなぁと考えた所、静夜の第一声から始まり、金蝉と太真のデートの話が出てきたので会話だけですがやってみました。 久しぶりに悟空たちを書いたので口調とかちょっとあやふやかもしれない(笑) ちなみに、舞台は現代パラレルで三蔵と静夜は恋仲。 金蝉と太真は婚約中という設定です。
2009/02/14 (BBSにて) |
静夜「あーあ、今年の年取った日ももうすぐ終わりだなぁ」 三蔵「……」 静夜「この年になると、もう自分が何歳かなんて考えたく無くなるっつーかアレだな。自分がいくつになったか解らなくなる」 三蔵「………」 静夜「それにしても今年はここ数年で一番サビシイ誕生日になったもんだぜ。何でよりによって皆出払うかな」 三蔵「…………」 静夜「悟空は学校の用事だったし、悟浄も八戒もなんかバタバタしてたし。…まあこの年になってまで集まってたってのが奇跡っちゃー奇跡か」 三蔵「……………」 静夜「でも、今日じゃなかったけど祝ってもらったんだよなぁ。後半はいつもみたいに宴会みたいになったけど。楽しかった」 三蔵「………………」 静夜「まああたしも、皆の誕生日にかこつけて騒いだりしてるからな。それが楽しいんだから文句は無いけどね」 三蔵「…………………」 静夜「なんだかんだ言って、大切にしてもらってる…うっわ自分で言っててサブイボたって来た! 慣れない事は言うもんじゃねぇな」 三蔵「……………………オイ」 静夜「ん? なに?」 三蔵「………………………俺が今ここにいるのは、不満か?」 静夜「!? まさか!! 最ッ高の誕生日プレゼント!」
あとがき
すんごいギリギリで申し訳ないけど。 静夜! 誕生日おめでとう! 2009/06/17 (BBSにて) |