男三人は困っていた。

どれくらい困っていたかと言うと。

沢山食べた後でゴールドカードが紛失していると解ったときくらい困っていたのだ。

 

 

 

SILVER Blue moon AnD GOLD Red sun

 

 

とある宿に一室で悟空、悟浄、八戒の三人は顔を見合わせて何かを考えていた。

3人から少し離れたところに三蔵は新聞を読んで座っている。

「なあ、静夜の誕生日プレゼント、どうすんだ?」

 悟空の問いかけに答えられない悟浄と八戒。

3人が何故顔を引っ付け困っているかと言えば、今日がここにはいない一人の少女の誕生日だからである。

静夜は町へ来るなり面白い物を見つけたのか、三蔵に一応の断りを入れ町へと駆け出していったのだ。

コレを良い機会だと思った三蔵を抜かした三人は今のうちに静夜の誕生日プレゼントを何にするかと考えようと言うことになったのだが…。

「毎年のコトとはいえ、なかなか決まんぇな。ヤッパ」

「静夜は物欲がありませんからね」

 女性の扱いに長けている悟浄が唸るように言えば自称保父と名乗っている八戒が困ったように笑った。

過酷な旅をしている以上物欲がないのは良い事だが、それでも静夜の物の欲しがらなさには驚くものがある。

あのくらいの齢の女性ならば色々な装飾品やらなにやらが欲しくてたまらないだろうに。

今まで生きてきた環境のせいか、それとも性格のなせる業か。

恐らく両方なのだろう彼女の事を思い出し、三人は大きな溜息を吐いた。

特に大きい溜息を吐いた悟空は恨めしそうに三蔵をチラリと見やる。

「三蔵はいいよな。もうとっくに静夜のプレゼント決めてんだから」

 元々みんなで集まって何かをするということが嫌いな三蔵は既に彼女へのプレゼントを決めていたのだ。

今でも、袈裟の中に大事に仕舞われているそれは銀に光る指輪。

しかも銀だけではなくところどころに薄く青玉や瑠璃の装飾がなされている見事なものであった。

静夜と想いを通わせている彼だからこそ贈れる代物だろう。

三蔵は不貞腐れているように自分を見ている悟空を見てフンと鼻で笑った。

「俺をお前らと一緒にするな」

「……………ぶぅ〜」

 そんなの解ってると言いたげに悟空は頬を膨らませると再び悟浄と八戒を顔をつき合わせる。

「とにかく、夜までには何とかして選びたいものですけど…」

「とりあえずケーキは焼くとして、だ。なんかイイモンはないのか?」

「…あ〜〜わかんねぇ!!」

 心底困った顔を浮かべる八戒、眉間に皺を寄せに寄せる悟浄。

とうとう集中力が切れたのか、頭を掻き毟る悟空。

三人三様のギブアップ寸前を見た三蔵は小さく溜息を付いた。

しかたねぇな。

また無理しやがったのか、と呆れながら嬉しそうに笑う静夜の顔を思い浮かべつつ三蔵は独り言のように呟いた。

「そういや、この町には特殊な鉱物が取れるって有名だったな」

 ピクリ、3人の耳が動いた。

「普通の金銀の生産量もさることながら、その特殊な鉱物のおかげでこの町は栄えてるはずだったな…確か…」

 鉱物の名前を言おうとした瞬間バタンと大きな音を立ててドアが開いて閉じていた。

あまりの行動の素早さに三蔵は目を見開いていたが、そのうちに軽く口の端を上げていた。

 

 

静夜が楽しそうな顔をして宿に戻って来たのは夕方も終わりに近い時刻だった。

「ただいま。………ってあれ三蔵一人?」

 部屋に入ると目の前にいるのは新聞を読み終えて茶を飲んでいる三蔵ただ一人。

他の三人は?と眼で問うと簡単に答えてくれた。

「あいつらは外に出てる。お前の誕生日祝いの代物を買って来るんだとさ」

「あたしの…………ああ、そっか。今日だったな」

 訝しげに小首をかしげていた静夜が今日が何の日か思い出したのかポンと掌をたたいた。

掌を叩く静夜に三蔵は呆れた表情を浮かべる。

「やっぱり忘れてやがったのか」

「こういう旅してるとね。つい…」

 決まり悪そうに苦笑する静夜に三蔵は袈裟から小さな箱を取り出して彼女に投げた。

急に投げられてきた物を上手くキャッチすると静夜は数回瞬きをして三蔵を見る。

驚いてる静夜の顔を見て三蔵は不機嫌そうに開けてみろと促した。

偉そうに言いながらもどこか照れているのだろう彼を見て静夜はクスリと笑い、箱を開ける。

箱の中身を見た静夜は花が咲くように段々と笑顔になった。

「スゲ…。コレ、あたしが貰ってもいいの?」

 美しく輝く銀と青の指輪を静夜が嬉しそうに見ながら三蔵に聞けば、

「当たり前だろ、他のヤツラにそんなものくれられるか」

 本当に気味悪そうに答えたので静夜は確かにと笑いながら答えた。

「ありがと、三蔵」

 指輪を見ていた瑠璃の眼を三蔵に向けながら感謝の言葉を述べれば、彼も薄く笑って答えていた。

「ああ」

 二人の間に穏やかな空気が流れ始めたかと想ったその時…

「静夜ーーー! 誕生日おめでとう!!!!」

 けたたましく数時間ぶりにバタンと大きな音を立ててドアが開いたかと思えば、悟空が大変に嬉しそうな顔で部屋に入ってきていた。

いきなりの乱入者に三蔵のこめかみには青筋が立っていたが、逆に静夜は驚きながらも嬉しそうな表情で悟空を出迎えていた。

「悟空! ありがと」

「ついでに俺たちもいるんだけどね」

「! 悟浄、八戒!」

 悟空の後ろからケーキを持った八戒と数本の酒瓶を持った悟浄が立っていた。

二人は笑顔を浮かべ静夜に声をかける。

「お誕生日、おめでとうございます。静夜」

「おめでとう、静夜」

 ケーキを持ったままなので笑顔を浮かべるしか出来ないが、その笑顔がとても優しい八戒。

部屋に入りつつ静夜の方をポンと叩く悟浄。

静夜は2人に向かって嬉しそうに笑った。

「ありがと、2人とも」

 笑顔に笑顔で返した静夜に悟空が声をかける。

「静夜。コレ、誕生日プレゼント! 俺と悟浄と八戒の3人から!」

「えっ?」

 3人からのプレゼントと言う言葉に驚いた静夜は悟空に向き直ると手に何か握らされた。

「この町の特産物なんだって、見てみて!」

 ラッピングは急いでて出来なかったんだ、ごめん。

悟空の申し訳なさそうな声に静夜は大丈夫だとかぶりを振って答えると握らされた手を開く。

「…コレって」

 静夜の手に平にあったのは金と銀のイヤリング。

しかも、普通の金と銀ではない。

「朱金に…青銀…これって」

 眼を大きく見開いた静夜は慌てて八戒を見る。

八戒は静夜の表情を予想していたのか、口を開いた。

「この町は特殊な金と銀…つまり朱金と青銀が取れる特別な土地だったみたいで、普段の物価よりも安く買い取れたんです」

「静夜って言ったら銀だけど、まあ今回は特別に朱金もいれてみたってことさ」

 八戒の言葉に悟浄が続く。

「静夜なら金も似合うだろってことになってさ」

 ウインクをしながら陽気に答える悟浄を見て静夜はもう一度朱金と青銀のイヤリングを見る。

「そのイヤリングに使われてる金と銀にはさ、もういっこ呼び方があるんだぜ」

 イヤリングを見つめる静夜に悟空が種明かしをするかのようにウキウキとした口調で言った。

「呼び方? どんなの」

 静夜が目を悟空に向けると悟空は意気揚々その名を口にする。

「朱金のほうは【ゴールド レッドサン】。青銀は…えっと」

「【シルバー ブルームーン】、だ」

 青銀の名前を思い出せなかった悟空の代わりに三蔵が答えた。

「あ、三蔵! 先に言うなんてズリィ!」

「覚えてなかった貴様が悪い」

「そうかもしんないけどさ!!」

 三蔵に言われてしまい頬を膨らませる悟空を見て静夜は手にある2つの金と銀を思い描いた。

ゴールド レッドとシルバー ブルー。

ハッキリ言ってそのままだといえばそのままなのだが。

太陽と月。

「…確かに、似合ってるかもな」

 静夜は薄く笑った。

 

 

太陽のように神々しく輝く朱金。

月のように神秘的に輝く青銀。

 

 

この二つの鉱石にこれほどに合う名前はないだろう。

 

 

「みんな」

 静夜が声をかけると、今まで三蔵に噛み付いていた悟空が静夜のほうを見る。

他の3人も静夜のほうを見ると静夜は本当に嬉しそうに笑った。

 

 

「ありがとう」

 

 

 

太陽と月の色をした金と銀を抱きしめて、嬉しそうに笑う静夜にコレを選んだ悟空悟浄八戒は満足そうに笑い。

三蔵もまた、柔らかく口の端を上げていた。

 

 

 

 

 

 

Happy Birthday! for Rou Seiya!!

 


あとがき

…ついに!!ついに!!!

静夜の誕生日祝いが出来たよ〜〜〜〜〜!!!(号泣)

三蔵「サイト開設から3年…やっとか?」

…そうです、ごめん。

しかも静夜に何を贈っていいのかわからなくて…あうあう。

なんか最遊記のキャラって煩悩はあるけど物欲なさそうでさぁ、静夜も然りね。

三蔵「物が溢れかえってみろ、旅に邪魔だろ?」

そうだけどさ…

三蔵「で、朱金と青銀、になったわけか?」

です。朱金はありだけど青銀はあるのかなぁと思いつつ、まあね朱金の対は青い銀だろうってコトで。

三蔵「安直だな」

俺様だからね。

三蔵「まあ、祝えてよかったな」

おお、三蔵にそう言ってもらえるとは!!(驚)

三蔵「コレを機に、きちんと更新しろよ、100題とかな」

…………………はひιι

あ、そうだ、コレは言っとかなくちゃね。

静夜、お誕生日おめでとう!これからも宜しくね!!

 

 

 

2004.6.17

 

 

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