音が、聞こえる…
SUONO DI ANIMA
物心付いた時から、私の周りには『音』があった。
それはスピーカーから聞こえるものだけじゃない、もっと違うもの。
とてもたくさんの『音』。
お母さんの話だと、生まれたときから聞こえてたらしいんだけど、生まれたときの記憶なんて持ってなかったから当然の如く
覚えてない。
こんなに沢山の『音』に囲まれててよく気が狂わなかったもんだと、『音』の調節が出来るようになってから思ってたんだけど…。
よくよく考えればそうならないように、お母さんやお姉ちゃんや玻璃が守っててくれたんだよね、うん。
感謝です。
私には幽霊とかそう言うものは見えなかったんだけど、でも時々感じてた。
って言うか、聞こえてた、かな?
哀しいと寂しいと憎いが織り交ざった『音』がヒトには見えないモノと一緒に時々町を彷徨ってて。
そのままその『音』を纏って彷徨うのかなと思ってたら、ヤッパリ目には見えない誰か―って言っても『音』だけしか聞こえないん
だけどね、まあ一応誰かってことで―がその『音』の持ち主を斬っていくの。
そういう『音』するんだ。
……斬るって言うとなんか物騒だけど、でもそうじゃない。
斬られた後の『音』は哀しいと寂しいは残ってるけど、憎いが無くなってる。
憎しみだけをもしかしたら誰かは切っているのかもしれない。
その後、『音』を纏った何かと斬った誰かの『音』は知らない間に消えてるんだけど、この世界には目には見えなくても存在する
何かがいるんだって事解ってたんだよね。
………後になってその音の正体がなんだったのか解るんだけど。
そんなこんなで、私はお母さん、お姉ちゃん以外の誰にも聞こえない『音』を聞いて生きているんだけど。
一つだけ、とっても気になる『音』があるんだ。
『音』の調節が出来るようになってからも聞こえてくる『音』。
どんなに音量を下げても下げても消音<ミュート>にしても、聞こえてくる『音』があった。
それはとても強くて優しい『音』
聞いてるととっても暖かくなる『音』が私は大好きで、消音にしても聞こえてくるなんて変だなぁと思ってたんだけど、別に気にする
事もなかった。
でも、いつからなんだろう?
その『音』に聞こえてきた微かな雑音<ノイズ>。
ノイズから聞こえてくるのは悲しみと後悔。
まるで雨の音みたいに細かい雑音はその後もずっと、あの強くて優しい暖かい『音』と重なるように続いていた。
全然違う二つの『音』の筈なのに、その『音』は不協和音になることなく不思議な『音』を奏で続けていて。
会ってみたい。
そう強く思った。
相反するだろう『音』を持ちながらもそれを別のモノへと昇華させてしまう悲しみと強さを持ったヒト。
どんなに頑張ってみても決して消すことが出来なかった『音』を持っているヒト。
会ってみたい。
私、きっとその人のこと凄く大好きになるって、体のどこかで確信してた。
中学校に入って、今まで以上にあの『音』を強く感じた日があって。
もしかしてって思って、普段は絶対通らない路地裏に向かって走り出してた。
最初に目に入ったのはオレンジ色。
薄暗い路地裏のはずなのにそのオレンジは凄く明るい色をしてて。
私がずっと聞いてた『音』のイメージと変わらないもんだから、ちょっとおかしくて笑っちゃった。
そしたら、オレンジ色は私に気付いて仰向けになりながらも俯いていた顔を上げた。
目の色も暖かくて強いブラウン。
眉間に皺寄ってるのがちょっとアレだけど、私は本当に嬉しくて、でもこの状況で笑顔を向けるのはちょっと不謹慎だから。
聞き続けていた『音』に出会えた感激はとりあえず置いとくとして。
「大丈夫?」
そう声をかけた。
初めまして。
ずっと、会いたかったよ。
Fin
あとがき
初BLEACH!
珍しくオールキャラじゃない!
おお!(笑)
オリキャラ平坂 維の独白でした。
彼女は霊を見ることは出来なかったのですが、その代わりに霊…というより魂の『音』を聞くことが出来る力を持っているのです。
彼女たちの紹介ではその『音』を魂ではなく霊圧として扱っているので、そっちで取ってもらった方がいいですね。
現に、まだ維は魂の『音』を自分の意思で聞くまでに至ってないので(時々ランダムで聞こえてくる/笑)
今までずっと維に聞こえてきた『音』は一護の霊圧の『音』。
普段から隠すことなく(ってか隠せない)ただ漏れだったと言うので(笑) んじゃ、その霊圧は絶対に維の耳に入っているはずだ、と思ったのです。
維が消音にしても聞こえてくるほどに一護の霊圧が強かったと言うことで、解釈していただければと思います。
2006.11.9